ひとつにはそもそも田畑に根粒菌が存在している場合、根粒菌の接種の効果はいまひとつになるということがあります。植物にとっては根粒菌と共生するということは、自分の栄養分をとられるというリスクをおかすわけですから、こちらの都合で大量の根粒菌とくっつける、というわけにもいかないのです。というわけで、すでに根粒菌が生息している田畑では、それ以上田畑にいる根粒菌を増やしても意味がなくなってしまうのですね。
もう、ひとつの課題は、多収を目指せば目指すほど、根粒菌の寄与率が下がるということです。寄与率とは、ある作物が吸収する窒素量のうち、土壌から吸収したものと根粒菌によって空気中の窒素を吸収したものの割合です。そもそも寄与率は、20%-80%と幅があるわけですが、収穫効率をたかめると、寄与率は下がってしまうそうです。ようするに、化学合成肥料をつかったほうが、効率的じゃない?という話です。
最後に、これは微生物を農業用資材として用いる際、すべてにいえることですが、効果がいまいち安定しないということですね。微生物とはいえ生き物ですので、そのパフォーマンスは田畑の状況で大きく変わります。とくに根っこに共生する根粒菌は、植物の根っこにはたくさんのほかの微生物が存在しているので、競合してしまうわけですね。その競合とか環境とか、土の中ってのは私たちが思っている以上に複雑なので、効果を予測して資材を与えるというのはやはり難しいようです。
これまで微生物資材としての根粒菌の課題ばかりを見てきましたが、悪いことばかりではありません。根粒菌がいない場所では絶大な効果が期待できますし、休耕畑でマメ科のレンゲソウやクローバーを育てるのは、根粒菌の窒素固定の働きを利用して、農地を肥やしたりよくします。なにより化学合成肥料を使わないので財布にも環境にもやさしい。
ただし、微生物資材という意味ではその安定性というのがこれからも問われていくことになるのかな、と個人的には思います。