三児の父はスキマ時間でカルチャーライフ

仕事も趣味も育児も妥協しない。週末菜園家が、三児の子どもたちを育てながら、家事と仕事のスキマ時間を創って、映画や農業で心豊かな生活を送るブログ

コズモポリス

コズモポリス (新潮文庫)コズモポリス (新潮文庫)
(2013/01/28)
ドン デリーロ

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こんなに面白そうな映画やのに、私が観た映画館ではカップルシートが全部で9席だけのシアターでの上映だったし、公開1週間後には1日に2回しか上映されない、とか人気があるとはいえないようでした。

 観て感じたのは確かに万人受けは全くしない、というか難解すぎてどうかなという映画でした。それでも最後まで観させるのは、かなりスタイリッシュな映像と音楽にあるといえるでしょう。オープニングを観るだけでも何かが始まる感じでワクワクしますし、映画の大半の舞台であるリムジンの内装であったり、随所でかかる音楽はなかなかにクールです。

 

 肝心のストーリーといえば、ビジネスの世界で巨万の富を築いた若きエリート社長が、ハイテク機器を備え、オフィスを兼ねたリムジンに乗って床屋に髪を切りに向かう1日、という内容です。その間、投資に大失敗して巨額の損失を出したり、妻から関係を断たれたり、さらには暗殺者に命を狙われたりします。

 

気になる演出としては、とにかくはじめから不穏な空気がずーーっと流れています。預言者とまで言われ、思い通りに巨万の富の築いてきた主人公は、この映画内の1日においてはハナから最後まで、何か思い通りに行きません。部下や同僚とのギクシャクした会話、やたら嫁にSEXしたいアピールしてかわされる、通貨"元"の動きは読めないし、医者には前立腺のバランスが悪いといわれる。最後には暗殺者の存在まで明かされ、不安が増大していくわけです。ここのあたりに共通するギクシャクした空気感がよく表れています。

 

もうひとつ映画を通じて繰り返し描かれたのは、リアルな肌感覚というか刺激への主人公の欲求です。SEXの快楽、直腸診断、スタンガンで撃ってくれ発言、自分で掌を銃で撃ち抜いたり、と様々です。これが何を意味するのか、はっきりと意味するところは分かりませんでしたが、主人公が身を置く資本主義経済の不確かさに対する反動なのではないかと考えています。

 この映画、大変な情報量の映画であることは間違いないし、とにかく難解な台詞回しが特徴といえるでしょう。1回の視聴で、すべて理解することはほぼ不可能です。セリフが妙に詩的というか哲学的なので意味不明なのです。よく言えば何度も見返すことで味わい深くなるタイプの映画かもしれません。よくわからなかったけど、シーンのひとつひとつは脳内に印象づけられる、そんな映画でした。