Whistle Life

食と農の話題を中心に、日々の雑感をつづります。

減反の見直しを迎えて検討すべきいくつかの点

  減反

最近、減反見直しの検討に入ったと連日ニュースで報道されていて、農業関係者の間ではかなりのインパクトを持って受け止めています。減反が見直されるとなれば、1970年代から続いてきた戦後農政の大転換ということになります。ここ数年、TPPに代表される攻めの農業だとか農業改革だとか耳にすることは多かったですが、肝心の生産調整については見て見ぬふりがあったのかな、と感じていたので個人的にはようやく重い腰をあげたなという印象です。

 どちらかというと悪玉と捉えられる減反政策、今回は見直すに当たって検討すべき論点を挙げていきたいと思います。

 

1.TPP交渉の行方

 

 林農林水産大臣によれば、減反の廃止を7年後の2020年までに実施したいという考えを明らかにしています。減反の是非を検討するうえで無視できないのがTPPの存在です。そもそも減反は米の生産量を調整することで生産過剰による米の価格下落を防止する政策ですから、その点で減反政策は、外国産の米は輸入しないという前提に立っているといえます。

 なので、TPPで米の関税が撤廃されるとなったら減反という政策自体意味がなくなります。逆に、今回突然の減反見直しの機運の高まりは、TPPによる米の関税撤廃を容認する動きなのかもしれません。

 

2.補助制度の行方

 

 農業政策というのは補助金とともに語られることが多く、それが農家保護と批判の対象となったりします。減反見直しにあたってもこのあたりの補助金制度とワンセットで検討すべきでしょう。

 現状の農業補助金をみると、まず減反に対する補助金があります。水田で米を作らず野菜や大豆や飼料用米などを作付けすると単位面積あたりいくら、という計算であります。米の価格を維持するための政策に税金が使われていることに違和感を覚える人も多いでしょう。さらに民主党政権になってからは、減反する部分だけでなく、米を作る人にも戸別所得補償という形で補助金が支給されます。この政策は結構悪名が高く、バラマキとの批判も多いです。

 実は戸別所得補償自体は、欧米などでも一般的な政策であるのですが、日本とは対象が違います。日本では専業・兼業の別に関わらず農家一律で支払われるのに対し、欧米では意欲ある専業農家に限ります。

 減反は廃止されても補助金漬けは変わらない、なんてことにならないよう検討していただきたいものです。

 

 

3.中山間地域における農地の位置づけ

 

 減反廃止の必要性は、概ね次のように語られます。米の価格維持政策がなくなることで、零細農家は自らの農地を手放し、大規模農家に集約されます。大規模化によって米の生産性が向上し競争力をつける、というものです。

 注意しなければならないのは、日本の耕地面積の44%が中山間地域に存在するということです。日本は島国で山が多く、急峻な地形にいわゆる棚田の形で農地が存在しているところが多いのです。そうなると、規模を拡大するには条件が悪く、上のシナリオどおりに農地が大規模農家に集約されるのか疑問が残ります。さらに、集約されずに手放したままになると耕作放棄地になり、水田の多面的機能として知られる土砂や洪水防止など集落の維持に危険をもたらす可能性が高まることを留意しておく必要があります。

 

 

4.米以外の作目の位置づけ

 

 今後、減反見直しが話題になるたび、攻めの農業への一里塚として語られるでしょうが、日本が戦略的に取り組むのは米だけなのでしょうか?確かに日本は瑞穂の国といわれますし、主食が米であることは事実ではありますが、米の大規模生産化だけが攻めの農業として語られることは少し違うと思っています。むしろ、差別化を図りやすい野菜こそチャンスがあるとも思えます。

 

 

 これまでいくつかの論点をみてまいりました。今後減反の見直しについてさまざまな議論がされることかと思いますが、減反するしないにとらわれない、日本の農業をどうしていくのか大局観も必要になってくるでしょう。