三児の父はスキマ時間でカルチャーライフ

仕事も趣味も育児も妥協しない。週末菜園家が、三児の子どもたちを育てながら、家事と仕事のスキマ時間を創って、映画や農業で心豊かな生活を送るブログ

《農政ウォッチ》機能性表示食品制度における農産物の難しさ

 今年から新しい食品の機能性表示制度が出来ました。

 「機能性表示食品」はあらかじめ消費者庁に届け出を行うことで商品パッケージに機能性を表示できる制度です。いわゆる健康食品において、はっきりと効果・効能を謳えるようになる制度といえるでしょう。

 

「ん?今までは健康食品て効果・効能をうたえないの?」

「これまでもそんなパッケージみたことある気がするけど」

 

 そんな声が聞こえてきそうです。

 実は機能性を表示できる制度というのは従来からあります。それはトクホと栄養機能食品です。トクホのさきがけはヘルシア緑茶とかそのへんだと思いますが、トクホというのは健康の維持増進に関わる効果・効能について国が審査してその表示の許可を行う制度です。ヘルシア緑茶や黒ウーロン茶がその代表格といえるでしょう。栄養機能食品については、1日に必要な栄養素ビタミン、ミネラルについて一定の基準をみたす量含まれている食品ならばその効果を謳える制度です。

 

 一方でこれらの既存の制度というのは、トクホなどは国の許可がいるので申請に費用も手続きもかなりのコストになりますし、栄養機能食品は表示できる成分が限られています。したがって売り出したい機能があっても、実際はハードルが高いのが実情でした。

 そこでトクホや栄養機能食品以外のいわゆる健康食品についても効果を謳える制度が必要ということで、こうした背景から新しい機能性表示制度ができたのだと思われます。

 

「いやいやトクホ以外にも効果を謳った健康食品てみたことあるよ」

 またツッコミが入りそうです。

 

 実はよくみると巷であふれる健康食品というのは具体的な効果・効能を謳っていないのが現実です。あまりリンクをはれませんが、グルコサミンとかDHAなどの成分押しの食品を調べてみてください。かなり曖昧な表現であることがわかります。でも普段からCMとか見ている私たちからすると、なんとなく効果がイメージできてしまうのが不思議なところです。

 つまりこれまで企業は明確に効果を記載できない中で、グレーゾーンの対応に迫られていたといえます。そこで今回の新しい制度によって整理がつくものだといえるのです。

 

 ここで新たな機能性表示制度の特徴について説明します。いろいろあるかと思いますが、大きいものが3点。

  1.  消費者庁への事前届け出制で、企業の責任において表示
  2.  査読付き論文による研究レビューでOK
  3.  農産物等生鮮品でも登録可。

 

 ここでは③ 農産物等生鮮品でも登録可。について少し深堀りしてみることにしましょう。機能性表示制度自体では欧米や韓国などでは先行して導入されている制度なのですが、実は農産物で登録すること自体は世界で初めての制度といえます。

 しかしながら、農産物での登録となると、現実にはハードルが高い状況にあるといえます。まず大きな要因として、農産物はその時の気候や個々の生産者の技術で品質が全く一定しないものであるということです。そのため表示する成分量が担保できなかったり、あるいは過剰となったりする可能性があるということです。

 

 さらに、申請コストの問題もあります。大企業の食品会社はともかく生産者グループがヒト臨床試験レベルの担保はもちろん、査読付き論文の研究レビューもそのノウハウや費用の面で大きなハンディとなるでしょう。

 さらに、農産物というのは他の栄養素も含むため、ほうれんそうは食べすぎたら尿管結石、梅干しなら食べすぎたら高血圧が心配され、機能性成分を含んでいるからといって、常用するのは場合によっては不健康であることがあり得るのです。

 

 実際に、現在申請されている機能性表示食品の一覧を見てみると、ものの見事に大手の食品会社や製薬会社による申請であり、農産物は一件もないことが分かります。

 少し寂しいと思う一方で、農産物でこの制度に載ろうと思えば、その成分がある程度濃縮される加工品等が現実的なのかな、と思う次第です。ただし、温州みかんなどが現在申請を検討ということは聞いたことがありますので今後の動向に注目したいと思います。