三児の父はスキマ時間でカルチャーライフ

仕事も趣味も育児も妥協しない。週末菜園家が、三児の子どもたちを育てながら、家事と仕事のスキマ時間を創って、映画や農業で心豊かな生活を送るブログ

《農政ウォッチ》農協法改正案は本当に意味があるのか?

ここ数日は国会関係の話題で、農協法の改正案が衆議院を通過したとニュースになっています。

 

今日はこの農協法の改正案について解説してみたいと思います。

まずこの農協法の改正案で一番大きなトピックが

JA全中一般社団法人化及び単位農協に対する監査業務の廃止」

と言えるでしょう。

 

正直なところ、これが60年ぶりの大改革と言われても、ピンとこない人がほとんどなのではないでしょうか。これがどういうことを表していて、どのように農協が改革されるのでしょう。。

 

JA全中とは

 まずはじめの質問。これがどういうことを表しているのか、に答えるためにはJA全中をはじめとする農協について理解しなければなりません。

 農協というのは、すごくざっくりいうと、農家が集まって出来た組織です。

 戦後に農協法という法律に基づいて組織された法人なのですが、もともと農家というのは個人経営、家族経営、いわゆる家業的な職業ですから、社会的に弱い立場になりがちです。そこで組合員同士の相互扶助を目的にさまざまな事業を展開しています。

 わかり易いところでいえば、農産物の共同出荷や農業用機械の共同購入、組合員への販売などの農業経済事業。あとはサザエさんでおなじみのJAバンクなどの金融事業や共済なども行っています。

 実はガソリンスタンドや旅行代理からシロアリ駆除までさまざまな組合員向けのサービスを展開しており、パチンコと風俗以外はなんでもやっているとまで言われています。

 

 こういった農協は各地域に単位農協として地域に根ざした組織として、存在しています。あなたのお住まいの地域にも必ずといっていいほどあると思います。

 そんな農協を指導監督する組織が中央会です。都道府県レベルの中央会と全国レベルの中央会がありまして、後者がJA全中というわけです。

 つまりJA全中は、全国の農協の指導的立場であり、また国策レベルでの農業関係の代表的調整の役割を担っている組織なのです。

 

 今回の改革案は、JA全中による画一的な指導によってその地域ごとの自由な経済活動を阻害しているという観点からその権限を大幅に縮小するというものです。

 

監査業務廃止は内容よりも意識面での影響??

 しかしながら国会では、JA全中が画一的な指導することで単位JAの競争力を弱めている事実はあるのか?監査業務を廃止することで自由な経済活動にどう影響があるのか?議論されています。

 

 私はむしろこの改革というのは、実質的な影響よりも農協に対する意識面での影響の方が大きいのではないかと考えます。

 つまり、今回の法改正が意味するところは、内容はどうあれ、政府の意見によって JAの権限が実質的に縮小された。この事実は、JA全中のみならず、単位農協においても意識面での影響は大きいのではないかと考えます。

つまり、政府の意図としては地域の単位JAは、

 

「やったー、上からガミガミ言うJA全中がいなくなったぞ!これからは自由にのびのびと活動させてもらいます!」

 

 なんだけれども、実際には単位農協からしたら、これまで組織だって活動してきたことから、今回の解体はJAグループ全体における体制の脆弱化を連想させていると思います。

 つまり、、、

 「お母さん(全中)がいなくなった。どうしたら良いのだろう・・・。」

 

大切なのは組織のための組織としてのJAでなく、協同組合としてのJA

 地域の単位農協がこのようなスタンスになるのも、本来地域の組合員への相互扶助という理念が揺らいでいて、JAグループの組織という意識が根強いのではないかと考えるからです。

 というのも農協というのは、その設立の趣旨としては農家の相互扶助のための農家が集まった組織です。でありながら実のところは戦後GHQの指導のもと、政府主導で立ち上げられたという農協の経過があります。つまり、そもそもが、農家の自主的で純然たる協同の精神ではなく、組織ありきの立ち上げだったというわけです。

 はじめから組織ありきの大きな組織であった農協にとっては、いきなり個別の自由な経済活動を求められても、自立できないというところが実情なのです。

 その意味で、本当の意味での農協改革は上部組織の権限を減らすことだけではなく、地域農協の本来の協同組合の精神をいかに発揮させるか、というところにあるともいえます。