さて、先日はボケナスについて説明しましたが、今回もナスネタで行きたいと思います。
「ボケナスのわけ」では主に色のくすみについて説明しましたが、今回はそもそもナスにどうやって色がつくかということについてみていきたいと思います。
まず、日本で食される多くのなすは、光沢のある黒紫色となることが一般的ですが、この黒紫色への着色には光、とりわけ紫外線が必要だといわれています。このことは袋を使った実験で確かめられています。なすを開花してから、遮光のため、袋がけを行って暗黒状態にして栽培すると、果実の色は黄色じみた白色(一部赤紫)になってしまったのです。
http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010581876.pdf
ただし実は上の実験では、暗黒処理しても黒紫色に着色される品種があることも報告されています。つまり、光があろうがなかろうが着色する品種です。
うーん、なかなかややこしいですね。
黒紫色に着色されるのに光が必要な品種かどうか、簡単に見分ける方法があります。ヘタをペロッとめくって何色かどうか確かめるのです。何の得にもならないかもしれないですが。
光が必要であればヘタの下は日があたらないので白くなっています。必要としない品種はヘタの下も黒紫になります。前者において日があたらないところだけ白くなるのはさながら炎天下のなか帽子を被った後にできる日焼けの跡のような感じです。
たとえ話として日焼けの跡の話を出しましたが、実は本質的には同じ現象です。
というのも光で着色されるメカニズムは日光(紫外線)があたると、その防御反応としてアントシアニンの一種であるナスニンが合成されるのですが、これは人間の皮膚が紫外線に対する防御反応としてメラニンが沈着して黒くなるのと同じです。
ちなみに、トマトの場合果実の成熟過程における葉緑素の分解により、残った色素であるカロテノイドの赤色がトマトの色となります。そのため、トマトは果実が大きくなって成熟してから赤色になるのに対し、なすは果実が大きくなりながら着色されていきます。
ところでなすの着色パターンについてはまだ紹介していないのもあります。それは白いなすです。最近のイタリア野菜のブーム等で色の薄いなす、なんなら真っ白ななすの品種が存在します。ここまでお読みいただいた方なら分かると思いますが、白いなすはナスニンが合成されないことによります。なすは英語でeggplantと呼びますが、原種はこのように色素が合成されない白いなすの品種だったのかもしれません(未確認)。
ここまでみてきたようになすの果実にはいろんな着色パターンがあってなんだかややこしいようにも思えますが、実は人間だっていろんな肌の色を持った人種がいたり、紫外線への反応も人種によってさまざまだったり、色素合成されないアルビノの人もいたりすることを考えると納得できます。
変わったなすを見かけたら、ヘタの下を覗いてみると面白いかもしれません。