「瑞穂の国」幻想を捨てて、日本で100個くらいの自給圏をつくる。
こんな一見突拍子もなくて、ともすれば夢見がちだと思われてしまいそうな主張ですが、それがこの本の主題になります。
夢見がちろはいいながら、読み進めていくと、その記述は理念だけでなくその具体的方法論にまで踏み込んでいることが分かります。ここが本書のすごいところです。
つまりは、著者はヤル気だということです。
実際、著者は「カルビー」で契約栽培を始め、「日本で美しい村」連合で指導的立場にある実践者であります。内容的には固い本ですが、本人の熱意とヤル気が伝わってくるのです。
さらに本書のすごいところは、単に熱いだけでなく主張に至るロジックが明確なのです。
・自給率が低いからこそ伸びシロがある。
・出生率の低い都市部から出生率の高い農村部への人口移動。(都市部で対策打っても非効率)
・農村の行き詰まりのきっかけは食料の供給過剰になったときから。
などなど豊富なデータや知識から裏打ちされるからこそ、一見突拍子もないのに納得感を得てしまうのです。
一番の発見は、田中角栄「日本列島改造論」に関するエピソードです。
田中角栄はその著書のなかでこう主張していたといいます。
① 消費者の意向に沿って、過剰になった水田を潰して、畜産を振興しよう。
② 東京一局集中を排して、機能を地方に分散させよう。
本来、二つの主張がセットになってこその日本列島改造論だったわけですが、なぜか②だけが残り、新幹線や高速道路網の整備だけが残ってしまったという残念なエピソードです。
近年はコメがかなり壊滅的なまでに価格を下げています。また、TPPの議論もあります。これからのコメをどう考えるかが、今後の農業を考えるといっても過言ではありません。
それに対して一つの答え(選択肢)を与えてくれたのが本書であるといえます。