猛暑が過ぎ、夏野菜も終わりに近づいてきました。
さて、夏野菜をご家庭で育てている方にはご存知の方も多いと思いますが、トマトやとうがらしなどの夏の果菜類は8月くらいの真夏になると、実が大きくなる前に赤くなってしまうことがあります。
これは一体なぜでしょうか?
赤くなる原因としては、直接的には果実の色素の変化により生じます。元々あったクロロフィル(緑色)が分解されてカロテロイド(赤色色素、トマトの場合はリコピン)が合成されるのです。
この着色の現象(果実の成熟の過程)は温度によってそのスピードが制御されています。完熟にいたるまでの毎日の温度の積み重ね(積算温度)で決まっているのです。たとえば大玉トマトは1,000℃になります。日平均気温25℃だとすると、収穫までに40日かかるわけです。
これが意味することはもうおわかりですね?
6月と8月では当然平均気温がかなり違います。つまり、完熟にいたるまでの日数が違うということです。8月の方が平均気温が高いので、完熟にいたる日数が短くなるわけですね(より早く1000℃に到達する。)。そうすると、果実の大きさ自体は日々の栄養分で決まっているので、大きくなる前に「赤くなる(成熟)」過程が進んでしまい、実が小さいまま完熟してしまうんですね。
ここで過去記事を思い出してみましょう。
なすの黒紫の着色は日焼けによって起こることを説明しました。
なので、なすは果実の肥大と黒紫の着色が温度に関係なく進行します。
ですが、このなすの着色とトマトの着色は違う種類なのですね。
色のつき方ひとつとっても、その背景を理解すると、品質向上や作業に便利になるので、やっぱり野菜を育てるうえで個々の現象の背景を理解することは重要ですね。