料理マンガで、出てくる料理を作ってみたいと思わされたら、それは面白いマンガといえます。料理を作らない人に面白いと思わせるのは難しいと思います。
かくいう私も昔は料理なんてほとんどしなかったですから、30歳超えて、料理作るようになって初めて料理漫画の面白さに気付いたわけです。
その意味で、この西川魯介さんの「まかない君」は、私のような料理をして来なかったけど、料理始めた人が読むのに最適なマンガです。
料理ができるようになったら、3姉妹と一緒に暮らせてしかも無条件に慕ってくれるようになる、という妄想を十分に広げさせてくれる作品です。
お話は、シンプルです。
主人公の浩平が、年上従姉妹3人と同居することになり、毎日ご飯を作ってあげる。
それ以上でもそれ以下もありません。
それでも、料理マンガとしての魅力があるのは、身近な食材を使いながらも美味しそうなご飯を作るからです。しかも、普通とはちょっと違う一工夫があり、やってみようかな、と思わせるレシピになっていると思います。
調味料だって、だしの素をガンガン使うので、食材にこだわっていう感じじゃない。今日読んで、食材さえあれば、夜はこれにしてみようかな、って思わせるレシピなんです。
個人的にはアジアンチキンライスがツボに入って美味しそうやし、一度やってみたいと思わせる料理だと思いました。
そしてこの作品を語る上で、欠かせない魅力(だと個人的に思っている。)は、主人公と従姉妹たちとのやりとりだと思う。
割と単調なコマ割りでセリフが単単と続くのだけれど、たまにゆるくて狙い過ぎないボケ・ツッコミが入ったりするのが、なんとも心地が良いのです。
例えば、一巻の卵料理のくだり。3姉妹同士のご飯の取り合いにならないようのを気遣う浩平の説明の後ろで3姉妹が、あずみや北斗の拳タッチで描かれていたりするのが、ギャップが出てて面白い。
また、特に好きなのは、料理の由来をそれっぽく言って、やよいちゃんが信じ込むくだり、浩平君はわりと真面目キャラなのに途中でボケやツッコミが入り、クスリと笑わせる作りになっている。それもギャグマンガではないから、本当に全体の流れの中でさらりと入っているから嫌味でもないんです。
日常系として結構よくできている。
本当の意味でこのマンガは終わらない日常を描いていると思いました。
話の中で、弥生ちゃんと浩平がただの仲の良い状態から、微妙に伏線的な演出もありつつ、発展するのかと思いきや、進展しそうであくまでニュートラルを貫く。
でもきっと話の主軸がそこにシフトしたら面白くなくなるんだろうな。変にドキドキしたり、関係性が崩れたら、きっとこうなるんです。
メシがまずくなる。
毎日同じようにおいしくご飯を食べられるこその日常の愛おしささえ感じられる良作だと思いました。