今回ご紹介する映画は「サイドウェイ」
2004年公開のアメリカ映画です。
人生期の黄金期を過ぎた、さえない中年男性二人による寄り道(サイドウェイ)ロードムービー。
学校の先生をしながら小説家を目指しているバツイチ・マイルス、友人ジャックの結婚式を前に、ワインとゴルフ三昧の旅に出ます。旅先では破天荒なジャックに振り回されながらも、素敵な出会いもありつつ・・・。
対照的な男二人のダメダメぶりが笑えるんだけれども、でもそこに愛着わくのは、過去の栄光にすがったり、いつまでも夢を捨てられずにいたり、別れた彼女との復縁を願い色々と妄想したり、とそのどれもが、誰もが心の奥底に持っているものとして、共感できるからでしょう。
映画を通して、成長とまではいかないけれども、ほんの少しだけ前向いて歩き出していく、そんな主人公たちの姿を通じて心が染み入る感情になる良作でしょう。
そして、なんといっても本作を特徴づけるのは、ワインの存在です。
ワインがきっかけで主人公とヒロインは出会うし、物語上の小道具として活用されるだけでなく、ヒロインの口からも語られますが、そもそも本作のテーマとワインづくりと重ねられています。
さらに、映画には多くの実在のワイナリーが登場します。この実在というところが臨場感というか、親近感に一役買っているのは確実です。
うわー、ワインの旅に行きたい!と全然ワイン素人である私に思わせる自体凄いことだと思います。
さて、この映画ではワイナリーとともに、ワイン畑も風景として多く登場します。
どこか様子がおかしいと思いませんでしょうか?
映画のシーンではありませんが、似たような風景を下に掲載します。
みなさんブドウ畑と聞いて何を想像するでしょう?
頭上一面にブドウのツタが張り巡らされて、そこにブドウの房が垂れ下がっている。
おそらくは下のような写真を想像するのではないでしょうか。
これはブドウの用途による違いになります。
前者は醸造用、つまりはワイン用のブドウ品種の畑。
後者は生食用、そのままフルーツとして食べる用の畑です。
実は日本では、栽培される8割は生食用ですが、世界全体でみるとなんと8割が醸造用品種となっているそうです。したがって、日本では生食用のブドウ畑の様子が、親しみある風景として頭に残っているのですが、世界的に見たら、ぶどう畑といえばこの風景なのですね。
この違いというのはブドウの栽培方法の違いによります。日本のブドウは生食なので、一房一房手間暇かけて作ります。したがって作業しやすいように天井からぶらさげるような形で実をつけさせる「棚仕立て」の形を取るんですね。一方でワイン用のブドウ畑は「垣根仕立て」と言います。おそらくこちらは比較的大規模に栽培する際の作業効率を考えられたものだと思われます。
せっかくなのでワイン用のブドウ品種の特徴をもう一点。
映画の中にもワイン用のブドウそのものの姿が登場しますが、日本のものと比べてかなり一粒一粒が小さいのが分かると思います。
これも生食と違ってあまり一粒一粒の大きさを気にする必要がないからでしょうか。
意外なのはワイン用のブドウ品種は実は糖度がかなり高いということ。
甘さを追求する必要もなさそうなものですが、ワインというのはブドウの糖分を使ってアルコール発酵させるので、糖分が必要なんですね。
ちなみにワイン用のブドウを生で食べられるかというと別の話で、ワイン用のブドウは糖度も高いですが、酸味もきついので、やはり生食には向いていないと言えます。
映画をきっかけにいろいろと勉強になったり、発見があったりするのは面白いですね。