三児の父はスキマ時間でカルチャーライフ

仕事も趣味も育児も妥協しない。週末菜園家が、三児の子どもたちを育てながら、家事と仕事のスキマ時間を創って、映画や農業で心豊かな生活を送るブログ

ノーラン映画としてのダンケルク・戦争映画としてのダンケルク

すごいクリストファー・ノーランっぽくもあれば、ノーランっぽくなくもある。
戦争映画としては、他と一線を画す。
でもこれが、スタンダードになるかというと、違う気もする。
そういう意味で実験的と言っても良いかもしれない。
 
 
いろいろ手放しでは褒められないけど、強烈に印象に残るし、もう一回観てみたい衝動にもかられる。なんだかモヤモヤとした鑑賞体験となりました。
 

ノーランっぽい映画って?

 
私にとって、クリストファー•ノーラン監督の作品は新作が出たら、観るべきというくらいには好き。
というか、映画好きなら、この人の作品は、観るべしってなるくらいのヒットメーカーになっていると思う。
 
それがどうしてこんな事になったのかな。って思ってる自分がいます。
そもそもノーランっぽいってなんだろう。
 
時にバカバカしすら感じるSF設定も、リアルで深刻で大きなスケールの絵作り、演出で観るものを圧倒させる。それが僕なりに感じたノーラン映画の印象です。
 
ダークナイトシリーズやインセプションでは、そのあたりのバランスが良いし、
特に近作のインターステラーでは、物語のスケールと映像美のスケールがピタリとハマって大きな感動を生み出していたように感じています。
 

ノーラン映画としてのダンケルク

 
今回のダンケルクがどうか。
映像は相変わらず文句のつけどころがない。特に砂浜での逃げ惑う軍は、スケール感を感じさせて良かった。
ただ今回の見所は映像でなく、音だと思う。
今回多く指摘されているところだけど、音の演出が良かった。
鈍い鉛の音が、ずっしりと腹にのしかかる。是非映画館で聞いてもらいたいと思いました。
ハンスジマーの劇伴も良かった。
ずーっっと裏で時を刻む秒針のリズムは、なかなか中毒性があると思う。
 
特に、冒頭の市街地からのダンケルクの浜辺までのあの一連の流れは素晴らしくて、それだけで映画館に来て良かったーって感じさせてくれました。
 
その後も脱出劇が続きますが、正直ここからやや単調に感じられてしまいます。
主人公たちの行動は常に説明がされないので、おいてきぼりをくらうし、脱出しようとしては襲撃されて右往左往するのをひたすら見せられる感じに加え、敵軍の姿が描かれないので、真に差し迫った感じがしない。
 
敵軍は去った、と思ったら急襲とか。
敵軍がこちらに気付く気付かないのサスペンスとか。
そのあたりのメリハリがなく単調に感じたのかなぁと考えています。
 
ノーランの過去作では、ひとつの映画の中でたくさんのアイデアがあったけど。
今作ではスケールの大きな映像と音の演出。それが全てだったようにも感じました。
 
 
もう少し、根本の話をすれば、戦争という史実と、ノーランっぽいリアル志向SF・ファンタジーという絵作りと食い合わせが悪かったのかなぁって思います。
実際過去作でも、脚本で粗を指摘されたりして、そこまで巧妙ではない部分がみられましたが、SFあるいはファンタジーが故にその圧倒的映像で許されていた感はあります。
 
史実は当然リアル。ノーランの世界観はリアル志向だけどSFファンタジー。
SFファンタジーであったからこそ、許されていたものが、現実の史実となると、そうはいかなかったのかとも感じています。
 
このことは、次の問いに繋がっていくと思います。
ここまでノーラン映画としてのダンケルクを評しました。では、戦争映画としてはどうなんでしょう?
 

戦争映画としてのダンケルク

 
結論的には、プライベートライアンを観た時の衝撃がこの映画では感じられませんでした。
よく言われるのは、ダンケルクには、ドラマが無い。
それもそうだけどドラマ以上にリアルが無いとも思いました。
それが、プライベートライアンとの違い。
 
戦場シーンは悲劇的な描写含めてリアルだったけど、ダンケルクには、映像の迫力や音の凄さはあったけど、何かこう現実離れした感がありました。
 
そこで、実際にダンケルクでは、映画内で悲劇が起こっているのにどこか現実の無さを与えているのかもしれません。
 
 
感情移入の出来ない理由に、ほとんど説明がされないというのもあるかも知れません。
プライベートライアンが高いドラマ性とエンターテインメント性を両立させてたのは、登場人物のキャラ設定や戦闘シーンのキャラ配置の妙と言えます。
本作ではそのあたりのキャラ設定と位置関係の整理がないがために、戦闘シーンもただ逃げ惑うというだけで、明確なカタルシスが生まれ得なかったのかもしれません。
 
 
少し辛口のコメントが続きましたが、実はこれまでの、説明のされなさや、敵軍が見えないとかは、ノーランの意図してのことだと思います。
 
訳も分からず、戦争に放り出され、いつ何処から襲われるか分からないという、実際の戦争の体感映画としてみると、一定説明はつきそうだけど、それがうまくノーランの資質と合っていなかったのかなって。
 
でもやっぱり、あの中毒性のある映像美と音の演出にずっと浸っていたい、という意味で新たな映画体験って言わざるを得ない気もするから、やっぱりノーランってなってしまいます。
 
本当にノーランって常に賛否両論あるよね。って話でした。
 

 

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