今回紹介する「シェフ」は、普段愛聴しているTBSラジオ番組「ウィークエンドシャッフル」のムービーウォッチメンの課題映画になっていたこともあり、気にはなっていました。ただ、アメリカの移動販売(フードトラック)ということであまり興味を持ちづらい分野でもあり、ちょっと観るのを敬遠しておりました。
しかしながら、観て見ると本当に幸せな気分になれる傑作でした。
陽気なグルメ映画でありながら、、
大人になった自分の仕事への向き合い方も真面目に考えさせられもしました。
本作の監督であり、主演でもあるジョン・ファブローの、「自分の気持ちにどこまでも素直である」という姿勢にとにかく勇気づけられたような気がします。
移動販売を始めるきっかけとなったグルメブロガーとの対決では、割と率直に「傷ついた」と言っており、ある種可愛らしい、というかどこまでも人間臭く描いていて良かった。なんというか感情の起伏の人間っぽさに親しみを覚えました。
息子との関係性も良かった。学校だか迎えに遅れた埋め合わせに、二人で行った遊園地よりも、グルメの話を父親とする方が子供にとっては嬉しい。そのあたりの、父親の働き方と子供との関係がうまくシンクロしていくのも良かった。
何よりも、フードトラックを新しく始める時のあのワクワク感はたまりません。
そのワクワクに華を添えるのは、やはりBGMでしょう。多国籍感溢れるBGMは自然と心が踊ります。
ちょっと移動販売になってからは、トントン拍子すぎて、もう少し葛藤があっても良かったかな、と思いましたが、観終わった後にはどこまでも前向きで清々しさを残すという意味ではこのバランスで良かったのかな、と思いました。
フードトラックをはじめるときに元同僚が手伝ってくれるのですが、そんな無償で手伝ってくれる人なんかいるかな?って思ってしまいます。
が、そんなことを指摘するのは野暮ってもんだ。ってな具合のポジティブさがこの映画には溢れています。
明るい音楽と楽しそうな料理シーンで、一貫した前向きさや幸せ感が良いと思ったんです。
食と農に関するところで言えば、まずはやっぱり料理シーン。手際よく、テンポの良い音楽に合わせて、生み出される料理はどれも美味しそうなものばかり。
(でもジョン・ファブローの恋人のシーンはカッコつけすぎな気もする笑でもそれこそ愛らしい)
市場のシーンでは、日本との違いも表現。いわゆるマルシェの感じって日本には無いですよね。(同じ品目の野菜がどーんと並べられている。)
日本の市場では基本的には小売していないと思うのでこの辺りは、やはり文化の違いなのでしょうか。
あとは最後はキューバサンド。映画を観た人の誰もが、作って観たいと思うのでは無いでしょうか。それを知ってか公式サイトでは監修レシピが公開されています。
料理って、作る側も食べる側も何か根源的な人の喜びを表現するような。
あとはなんか、結末を見るにつけ、本当にすべての人に寛容なアメリカを感じさせられもしました。
凡庸な表現だけど、明るく前向きになれる一作です。アメリカ行ってみたいな。