三児の父はスキマ時間でカルチャーライフ フロム京都

三児 レイ アスカ シンジを育てながら、スキマ時間でカルチャー情報を発信。働き方改革時代の心豊かな生活をお届けします。

《ムービーウォッチメン予習編》オリエント急行殺人事件

愛聴しているライムスター宇多丸さんのウィークエンドシャッフルの看板コーナー「ムービーウォッチメン」の予習記事です。

 

今回ムービーウォッチメンであたった映画は「オリエント急行殺人事件」です。

オリエンタル急行殺人事件は、言わずと知れたアガサクリスティーの名作ミステリーの映画化です。1974年に一度映画化されているので、今回はリメイクとも言えるかもしれません。

日本でもわりと最近に三谷幸喜が監督、野村萬斎が主人公のポアロ役でテレビドラマ化されていますね。

 

本作の原作小説がミステリーの普及の名作となっているのは、読者の予想を裏切る「犯人」にあります。

これまで形を変えて何度も映像化されていることもあり、多くの方がその「犯人」を知っている状態で鑑賞することとなります。

 

はて、謎解きが肝のミステリーで「犯人」を知っていながらにして楽しめることが出来るのか。それが本作を評価する上で最大のポイントとなりそうです。

 

以下結末に触れますのでネタバレ注意!

 

やっぱり楽しめなかった謎解き

結論からいうとやっぱり謎解きを知っている状態では楽しめませんでした。

というかミステリーなのだから、これはある程度仕方がないとも言えます。

とすれば、これは「原作」を知らない人向けの作品だったのでしょうか。私はそうでもないとも思っています。というのも「原作」を知っている人に向けても、色々と工夫している部分も見受けられました。ただその工夫点が面白いといえるかが重要です。

ここでは1974年の映画版との比較しながら、謎解き以外の要素についてみていきたいと思います。1974版を便宜的にオリジナル版と呼びます。

 

① 掴みの部分

ここはオリジナル版と大きく変えられていました。

いきなりポアロが、小さな盗難事件を華麗に推理で解決するところから始まります。

探偵モノでもよくある構成ではありますが、テンポ感もあって、引き込まれました。オリジナルでは、冒頭にアームストロング家の悲劇が紹介され、ポアロの物語としては、いきなり船に乗り込むシーンから始まります。

 

② 分かりやすいエンターテインメント演出

改めての映画化ということで、エンタメ要素がオリジナル版から大幅に増えています。

確かにオリジナル版は、オリエント急行内の殺人ということで、ほぼ全編オリエント急行内の密室劇として描かれていました。現代で鑑賞するにはやや単調に感じられるかもしれません。ましてやオチを知っていればなおさらです。

本作では、オリエント急行が停車の原因が、雪崩になっていたり、アクションシーンが追加されていたり、列車の外でのシーンがあったり、娯楽映画としての見せ場を要所に入れています。そういう意味ではオリジナルより見やすくなっていると思います。

しかしながら、本作の魅力を大きく向上させる要素となっているかというと、そこは正直疑問です。銃撃のシーンなんかはむしろ、そこまでするか、とノイズにすら感じました。本作最大のオチである「許し」に結びつかないのではないかと。そこまでしたら許されないだろう。

また、どうしても「犯人」を知っているだけに、登場人物の見せ場が少し茶番に感じてしまいました。ハバード夫人の刺傷シーンとか。

 

③ 人間ドラマを強化した謎解き

 

元々の設定からして、アームストロング家にまつわる人間模様の要素は確かにあるのですが、本作ではさらに強化している感じがあります。

しかしながら12人の登場人物という多さと関係性の複雑さから、物語の中盤はインタビューを進めなければならないという物語上の必要性もあって、人間ドラマとしてはオリジナル版とそう変わりません。

しかしながら、終盤の謎解きシーンで急に感傷的なシーンが増えます。

善と悪のバランスというものをより強調した作りへと意図があるのかもしれませんが、正直ピンとこない部分ではあります。

 

完全犯罪を成立させるために「私(ポアロ)を殺せ!」とポアロ自身が言うのもちょっと納得が得難いと感じました。

 

④ かっこよくなったポアロ

ポアロの人物像も結構変わっています。

オリジナル版では、天才だけどかなりの奇人変人として描かれていました。

本作では天才で、奇人変人と言うよりは、完璧主義者として描かれています。

完璧主義が善と悪の間でゆれる、と言う物語のテーマ性を強化したかったのだと思いますが、現代映画としては見やすくはなっているとは思うものの、③の指摘同様終盤唐突にその件の演出が強化されるので違和感はありました。

オリジナル版の奇人変人vs乗客のちょっと噛み合わない感じやぶしつけな感じが好きだったので、ちょっと残念。

 

 

総評すると、殺人が起きるまでの掴みの部分はエンタメ映画らしく期待させるものがありましたが、結末を知っているとやっぱり中盤は退屈に感じますし、終盤の感傷的なシーンは蛇足に感じました。

この作品において人間ドラマを強化するのであれば、やはりもう少し時間と演出に手間をかける必要があるのでしょうか。

とはいえ、「犯人」を知らずに作品を鑑賞する人にとっては楽しめる作品になっているのではないでしょうか。

 

 

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