ムービーウォッチメンで取り上げられる映画の予習記事です。
いつも答え合わせ的に愛聴しています。自分と違う視点で作品を分析されていたりすると本当に関心します。
今回とりあげるのは、大九明子監督、綿谷りさ原作にして女優・松岡茉優の初主演作品「勝手にふるえてろ」です。
実は今回は、ガチャで当たる前に、すでに鑑賞しておりました。
よく参考にしているこちらのブログで絶賛されていたからです。
しかも松岡茉優ファンとしては、これは見ておかないとということです。
女優・松岡茉優さんのこれまで
ムービーウォッチメンでも松岡茉優さんは、度々評価されているように思います。
「桐島、部活やめるってよ」ではいじらしいギャルの役の演技は語られていましたし、「ちはやふる」評でも、若宮偲を演じた彼女は大変高評価でした。
個人的にはムービーウォッチメンにこそ選ばれていませんが、橋下愛主演の傑作農業映画「リトル・フォレスト」においてのキッコ役の実存感はまるでドキュメンタリーでした。
真に迫った演技は、映画を見ているのにドキッとさせられるほどにリアルで現実に引き込まれる感じがします。上に挙げた映画では、脇役でありながら圧倒的な存在感を残して行くのはお見事だと言えます。
そして、今回の初主演作の映画「勝手にふるえてろ」はそんな松岡茉優さんの魅力が詰まった大傑作でした。
この映画自体が割といろんなテンションが切り替わる未体験な映画ですが、それを見事に松岡茉優さんが演じ分けていて素晴らしいです。
単純化すると陽モードと陰モードの演じ分け、あるいは妄想モードと現実モードと言っても良いかもしれません。文字通り泣いたり、笑ったり、怒ったり様々な姿を演じきる姿はまさしくこれまでの彼女の集大成と言っても過言ではなく、初主演作として彼女の魅力が一番輝く作品だったのではないでしょうか。
単なるラブ・コメディーではない
30代独身OLヨシカは、中学の頃からずっと片思いをしています。その相手は、同級生のイチ。何かあっては、妄想の中でイチとの思い出をリフレインします。
そんなある日、ヨシカのことを好きだという「二」が現れます。
イチと二。理想と現実の中でどちらを選ぶのでしょうか。
これがストーリーのあらすじですが、これだけ聞くと、よくあるラブ・コメディに聞こえるかもしれませんが、これは完全にラブコメの粋を超えています。
あまりラブコメディとして紹介したくない感じがするのです。
確かに、前半は明らかにドタバタコメディーですが、ある事実が分かってからの情け容赦のなさには現実の恐ろしさを感じてしまいます。
何となく街中に居ると誰かと関わっているような気がするけど、気がつくと今日は誰とも喋ってないや、と急に孤独を感じることがある。誰もが大なり小なり感じたことのある孤独を映画的に突き詰めた孤独が描かれている気がします。
何も考えずに笑って観て過ごせる映画ではなく、何か観るものに突き刺さる何かがあるのです。
陰キャラこじらせオタクの至高のラブストーリー
それは主人公ヨシカという陰キャラこじらせオタクが、妄想に逃げ続けた人生から現実に向き合う成長物語でもあり、至高のラブストーリーであるからだと考えています。
ヨシカのキャラは決して万人に受け入れられるようなキャラではありません。
人によっては嫌悪感を抱くかもしれません。
しかしながら陰キャラの私にとっても共感できる部分がたくさんあります。
同窓会での振る舞い。あの居心地の悪さが本当によく表現できていましたし、あの「イチ」に近づくためにヨシカがとった行動への勇気には涙が出ます。
初めて「イチ」のマンションに行く頃には、もう傷つくのが分かっていて「イチ」には近づくんじゃない、本当にやめてくれって心の中で叫んでいました。
そして極めつけは、(ヨシカにとって)重大な事実が「二」にバレていたことが発覚した時のことです。もしかしたら周りからしたら本当に何も大したことのないことでも、本人からすれば「世界の終わり」となることがあります。
素直になればすぐに解決するようなことも「殻」に閉じこもってこじらせてしまう。
上で書いたその全ての対応が自分にも身につまされてしまい、自分のことかと感じてしまいます。
そして現実と向き合う
そして、この映画は「その後」を描きます。
これまで自分で勝手に妄想して相手の気持ちを聞こうとしなかった彼女が、面と向かって思いを吐露します。
そして怒涛の言い合いの結果結ばれる。
今まで「妄想(イチ)」の世界に引きこもってきた彼女がついに文字通り「現実(二)」と向き合うことができたのです。
陰キャの恋愛ものとしてこれほどの成長物語があったでしょうか?
きっと何かの折につけて見返したいなと思う大切な一本になりました。
なにせ松岡茉優さんの演技だけでもずっと観ていたいと思える映画ですから。
今回は少しテンション高めの記事になってしまいましたが、それほどおすすめしたい映画ということでご容赦ください。