三児の父はスキマ時間でカルチャーライフ

仕事も趣味も育児も妥協しない。週末菜園家が、三児の子どもたちを育てながら、家事と仕事のスキマ時間を創って、映画や農業で心豊かな生活を送るブログ

《ムービーウォッチメン》ちはやふる 〜結び〜 これ以上ない集大成

毎週TBSラジオ ウィークエンドシャッフルのムービーウォッチメンのコーナーで宇多丸さんの時評を聴く前に、予習で映画を鑑賞。その感想レポートをお届けしています。

今回の映画は「ちはやふる〜結び〜」。

前回、予習の予習編ということで「上の句・下の句」のレビューをお届けしました。

上の句・下の句の時点でちはやふるは青春映画の傑作という結論。俄然「結び」に期待して行きました。

 

mqchaso.hatenablog.com

 

 

結論としては最終編にふさわしく、涙腺崩壊の神映画でした。

もう千早や太一に会えないと思うと悲しくなってきます。

それほどの大傑作でした。

 

いや、もちろん上の句・下の句にも見られたような大作邦画に見られるような大げさな演技や、脚本のアラ、など気になるところがないといえば嘘になりますが、それをあまり余っての魅力が満載です。

 

重層的なテーマが感動を引き起こす

友情、青春、人生、恋愛。

青春を、人生をかけてかるたをやる意味。かるたをやった先に何が残るのか。

才能の限界とは。チームでかるたを取るということ。誰のためにかるたをやるのか。

さらには世代交代。

後世に引き継がれていくかるたへの情熱。

このような重層的なテーマが、クライマックスに向けて全て回収されていく様を見ながら、嗚咽な漏れそうなほどの感動を引き起こします。

 

かるたが語るストーリー

もはや、ちはやふるの特長と言っていいと思うのですが、かるたとストーリーのリンクが今回もお見事でした。

「しのぶれど」と「こいすてふ」で始まる二つの歌。

心に秘めた恋の歌と、恋の思いが噂になってしまった歌、その対照的な二つの句。

太一と新の千早をめぐる恋愛。二つの和歌の成り立ち。ラストの運命戦の対決。そして、「しのぶ」を取る、という千早と準クイーンとの対決。

二重にも三重にも意味が込められた、かるたによるストーリーテリングは過去最高の演出と言えるでしょう

 

 登場人物全員が輝いているという奇跡!

本物語の主人公は、広瀬すず演じる千早です。

彼女は突き抜けた演技ですが全く浮いていなく、顔の可愛さも相まって最高の輝きを放っています。

しかしながら、他の瑞沢高校のかるた部員の活き活きとした演技は、広瀬すずの演技を前に霞むどころか、確かな存在感を感じます。

それはほとんど奇跡的です。もしかしたら上の句、下の句の積み上げの上にあり、視聴者にはだいぶ思い出補正がかかっているからかもしれません。

それでも、かるた部のメンバー各キャラの役回りをそれぞれの演者が完全に体得していて、まさに阿吽の呼吸が聴こえてきそうなほどです。

何でもない部活の場面を見ているだけで幸せな気になるのです。

 

まさに三部作の集大成

この映画、上の句・下の句、観てなくても良いですか?と聞かれたら、それはおススメしません。

それは前作を前提としたお話の設定はもちろん、細かい演出や前作までで描かれているテーマが、本作で昇華されるからです。

茶道部の畳」「運命戦での素振り」「青春をかける」そのすべてが涙腺決壊の神演出でした。

 

太一の復帰が許せた理由

今回の映画、実は手放しで褒められない箇所も何箇所かあります。新と樺島さんの「付き合って」、「好きな人いる」の下りは、一回で充分でした。若宮クイーンも相変わらずの安定感でしたが、今回ちょっとギャグキャラが行き過ぎなきらいもありました。

しかしこれら以上にヒヤヒヤしてみてたのは太一の離脱と復帰です。

思ったよりも長期離脱で、全国大会に進んでいるのに復帰する気配がありません。みんなで練習しているシーンもあり、ここまで大会が進んでいるなかで、てめぇどの面さげて復帰するんだ!と思っていたら、なんと最期の最期、最終決戦での復帰です。

はじめは太一が、こんな美味しいところだけを取っていくような展開、まじでクレームもの、僕がかるた部だったら許せない、と思っていました。

ところが次の瞬間の、太一の土下座からの千早のタスキ演出で、これまた今度は逆に涙腺崩壊です。

終わってみればこれ以上ない復帰の仕方とタイミングでした。決してヒーロー登場ではなく、詫びから入るあたりが、太一のイケメンだけど不器用で誠実という人柄を見事に体現していると思いました。

またここでの演出も無言で過度な音楽を入れず、すぐさま次の対決に入ったのも最高でした。

 

書いているうちに今年暫定1位かも。っていうくらい色々語りたい、そんな気にさせてくれる名作です。太一と名人の話とかも語りたいけど、自分の中で未消化の部分があるので、原作見返したりしたいと感じました。本当に良かったです。

 

 

映画『ちはやふる』完全本 ―上の句・下の句・結び―

映画『ちはやふる』完全本 ―上の句・下の句・結び―