今回のダンジョン飯は、炎竜討伐からのミステリアスな新展開、そこからのシリアスな空気感、一方でモンスターを食べるというギャグ設定、パーティの中での気持ちの良い掛け合い、などダンジョン飯のこれまでの魅力が全てつまった傑作でした。
序盤から中盤のシリアスな展開
ファリンの復活とその蘇生方法たる黒魔術の存在が後になって、これほどまでにシリアスに効いてくるとは意外でした。ライオスをはじめとするのんびりしたパーティの物語、1話完結のギャグ物語がメインにも思えたので、ファリンが生まれ変わって惨殺を繰り返すというギャップが、とてつもないスリリングさを生んでいました。
異様に引き出しの多いストーリーテリング
三つのパーティーの邂逅が描かれる序盤。パワーバランスをはかりあう微妙な駆け引きがこの漫画で描かれるとは思いもよりませんでした。とにかくこの作者はストーリーてリングに関して、異様に引き出しが多いように感じます。
「モンスターを食べる」ということを、今回も当然ギャグにも使われているし、大真面目にテーマの中心に持ってくることもある。その振れ幅がとにかくすごいと感じさせます。
これまでの関係性を土台に一歩上いく人物描写
さらに今回の単行本では、これまでのダンジョン飯のキャラ描写をさらに一段階上にあげて、表現するということに成功しています。
例えばシュローのライオスの性格批判。
これまでのライオスの漫画らしいフィクショナルな性格を、ある種客観視してツッコミを入れるシュローとのやりとりなどこれまでの積み上げがあったからこそのなせる技だと感じました。
さらには、シェイプシフターとの対決。これまでのキャラたちの挙動を総ざらいするようなお話。特にマルシルの両面のようなキャラは、どちらも「わかりみ」が深すぎて感動すら覚えました。
毎回違った楽しみを見せてくれるのが、このダンジョン飯シリーズですが、ここにきてこれまでの集大成であり新展開のような物語の深みやキャラの掘り下げが行われる筆者の技量に改めて舌をまく見事な一巻でした。