マツタケ減少のなぜ。
さて、前回マツタケが微生物であること、キノコになることができるマツタケが激減していることをお話ししました。
それは何故か?
松林の環境が変わったからです。
「里山」という言葉をご存知でしょうか?
里山(さとやま)とは、集落、人里に隣接した結果、人間の影響を受けた生態系が存在する山をいう。(wikipedia)
近年、農村が抱える課題のひとつに、里山の保全があります。説明分の、人間の影響を受けた生態系が存在する山、とあるように、昔の人はよく山に入っていきました。松林では、松は建材に松の枝や低木などは薪や炭などの燃料に利用されてきました。落ち葉なども堆肥作成用として利用されてきました。
しかし、それが1980年代以降、化石燃料の普及によって、人は松林を放置、里山は放置されました。そうすると松林内の環境が大きく変わりました。
ここでどう変わったかを、松林の土壌の栄養状態から見てみます。化石燃料が普及する前は人の手が入っていたのが、今はなくなったわけですから、それまで人間が燃料などの資源として回収するはずの木材などは松林に残ります。そうすると、今は昔とくらべて、松林の土は資源が豊富な分、栄養も多いと言えるでしょう(富栄養化)。
一見、栄養が豊富であるならば、マツタケにとっても有利に聞こえます。でも実際にはこの富栄養化によってマツタケは減少したと考えられます。
ここである単純な事実に一度目を向けます。
マツタケが生えるのは松林だけ・・・。マツタケと松には、その名前からも分かるように密接な関係があります。マツタケには菌糸の状態があるというのは前回お話しました。実は、マツタケと松は地中に張り巡らされた菌糸のネットワークによって共生関係を結んでいます。
松にとっては、マツタケがいることで自分では手が届かない場所にある栄養分を提供したり、自分では利用できない栄養分を利用可能にしてくれます。
富栄養化が起こるとどうなるのでしょうか。
栄養が土の中に豊富にあるなら、松はわざわざマツタケと手を結ばなくとも栄養を確保することができます。そうすると、マツタケはお役御免、松林から姿を消すのではないかということです。
また、ほかにもマツタケが減少した理由はいろいろ考えられます。
単純に栄養が豊富になってキノコ状態(つまり、子孫を遠くに飛ばす)になる必要性もなくなったとか、近年は温暖化で、キノコ状態になる条件をクリアできなくなったのではないか、とか。
単にマツタケが食べられなくなって残念、という以上に里山の在り方を考えさせられる、という話でした。