三児の父はスキマ時間でカルチャーライフ

仕事も趣味も育児も妥協しない。週末菜園家が、三児の子どもたちを育てながら、家事と仕事のスキマ時間を創って、映画や農業で心豊かな生活を送るブログ

第9地区

3行de感想

・差別問題を描いていながら痛快なSF

・感情移入とは何か考えさせられる

・興味を持続させる見事な演出

 

 

第9地区 [DVD]

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 差別問題を描いていながら痛快なSF

 この映画冒頭だけで理解できますが、人種差別を反映した映画となっております。

差別されるのは、もちろんエビ。このような形でエイリアンが登場する映画も珍しいのではないでしょうか。

 人種差別を描いてはいるので、一見重い展開になりがちだと思うのですが、なんの、きっちりとSF映画としての魅力も詰まった映画になっております。

 まず、エイリアンの造形。はじめこそ気持ち悪いと思ったのですが、最後にはなんなら可愛いとさえ感じてしまいます。(このあたりの感情の変遷は次の項でも書きたいと思います。)

 特に後半テーマ的にもっと湿っぽい展開にもできそうなものですが、きちんとエンターテインメントとしての盛り上がりを魅せているのがすごいところ、それはウェポンであったり、敵との対決シーンしかりです。

 

感情移入とは何か考えさせられる

 この映画ジワジワと主人公に感情移入していく不思議な映画です。

というか、映画冒頭この主人公の小悪人ぶりに感情移入どころか嫌悪すら抱きます。MNUの職員としてエイリアンの移住計画を推進するボスになった時も調子に乗ってるし(笑)、仕事ぶりもその自身たっぷりな態度がいけ好きません。中盤以降のある展開となってからは主人公に悲しい運命に若干かわいそうに思うものの、徹底的に自己中心的に振舞います。中盤以降エイリアンと共闘するのですが、途中までは利害が一致しているから行動しているというだけなのです。なので平気で裏切りの行為をします。

 そんな主人公がエイリアンとの共闘の末、最後の最後、利他的に行動を振舞います。まるで映画冒頭の人物と最後の人物が別人かと思うほどの成長ぶりです。そこでふと思うのです。映画冒頭の主人公は、誰もが持っている自分の嫌な部分で、自分で認めたくない部分の自分でもあるのです。でもそれが映画の中の体験を通じて、他者理解へと成長する。

つまり、その意味で冒頭の主人公へも私たちは感情移入しているといえるのです。

 他者理解への成長が、まったく説教くさくなく、いや説教どころか誰に教えられるわけでなく映画の中で体感的に得ていく。ある意味究極の感情移入だと感じました。

 

興味を持続させる見事な演出

 

 上ふたつの項目を支えるのはこの演出力といえるでしょう。まず冒頭から驚かされます。はじめはドキュメンタリーっぽく関係者の証言、という形で物語がスタートします。これ自体は近年珍しくもない手法かと思いますが、途中からある主人公の行動の話へとスムースに移行します。ん?主人公に何があったんだろうか?この疑問は映画を見る協力な物語上の推進力になります。

 さらに、終盤の主人公のエビに対するあのあっと驚くあの行動。あの行動は次の展開を読めさせなくするばかりか、上述の自己中心→他者理解への体感をより強くさせます。

 そしてあのラストですね。主人公がああなってしまったことはまったくバッドエンドではなくむしろポジティブにも見えます。

 単にドンチャン騒ぎするだけの映画とは違う見応えあるSFでした。