三児の父はスキマ時間でカルチャーライフ

仕事も趣味も育児も妥協しない。週末菜園家が、三児の子どもたちを育てながら、家事と仕事のスキマ時間を創って、映画や農業で心豊かな生活を送るブログ

《映画にみる食と農》ヘンテコだけど語るべき魅力も多い怪作 ウルトラミラクルラブストーリー

映画にみる食と農シリーズ。今回は主人公の役どころが農家ということで,「ウルトラミラクルラブストーリー」を視聴しました。

タイトルの感じからしてあまり、農っぽくありませんが、農業の現場ならではのシーンが満載の農業映画 でもあると思います。

非常に分かりづらい映画ですが、とにかくシュールな画作りと松山ケンイチの嫌いになれないキャラづくりで不思議な魅力に満ちた作品でした。


以下ネタばれ有り。

青森県発達障害がある農家・水木陽人(松山ケンイチ)が交通事故で彼氏を亡くしたことをきっかけに東京から青森にやってきた幼稚園の町子先生(麻生久美子)に一目ぼれ。
陽人は人とのコミュニケーションに難があります。はじめは陽人の取る強引な行動に町子先生は、ドン引きして,まともに相手をしないのですが,ある日偶然陽人が農薬を浴びると、不思議と落ち着いた行動を取るようになっ て・・・。

冒頭のあらすじだけでも何の映画か分かりづらいですが,
見終わった直後は,開いた口がポカンとなる感じで。、いまでも理解できていません。


しかし駄作かと言われるとそうとも言えなくて,農業の現場を活かしたアイデア の詰まったシーンづくりで,思った以上に楽しめたと思います。



冒頭は正直,見続けるのがわりと苦痛になるレベルではありました

まず,本作の特徴ともいえますが,なんと全編津軽弁。最初テレビの音声で視聴していましたが,聞き取りにくくてヘッドホンに切り替えるくらいでした。

邦画はな んとなく聞こえたら脳内で補完できますが,さすがに津軽弁補完は難し かったです。
とはいえ、津軽弁ならではのギャグも用意されているほか,陽人が津軽弁であることにより,数々の蛮行に目をつむれるくらいには愛嬌が増していることは確かです。
そう思うと,この全編津軽弁というのは,わりと効果的であったような気もします。


飲み込みづらい陽人のキャラだが、後半にいくにつれ愛着も


この映画、陽人が発達障害であることは、中盤あたりにいたるまで特段説明され ません。
なので冒頭のふるまい寄行は、デフォルメされたキャラなのかどうかが判別しづらく,陽人がいろんな場所で人に迷惑をかけるので、その行動がギャグなのかなんなのか,正直イライラしました。


特に、最初の農作業シーンでは,芋虫をとるのに,途中でむしゃくしゃするくだり があるのですが,さすがに農家という設定でそのふるまいはどうなんだ,と感じざるを 得ませんでした。
「他のヒトと違う脳」のくだりはもっと先に示しておいて良かったのではないかとおもい ます。
でも屈託がないというか,純粋に町子先生を想う気持ちというのが,すごくピュアに描かれていて,農薬の効果もあって(笑)落ち着きを取り戻して以降、後半はむしろ可愛げがあってよいとすら想いました。
陽人が、町子先生,町子先生と繰り返すあたりは,結構クセになります。



青森の農家という設定だけあって,農業的な見所は結構満載でした

冒頭,これは本作のメインストーリーの根幹となる要素ですが,ヘリによる 農薬散布が描かれます。
あとは軽トラックを使っての行商,一面のたんぼ,農協の様子,牛のシーンなどのシーンが映画を彩ります。
農風景の様子が映画内での時間経過の表現にも一役買っていたようにも思います。

ちなみに陽人がつくるじゃがいもが小さいというくだりはありますが,じゃがい もの収穫は地上部が枯れるのがひとつの目安ですから,あれだけ葉っぱが青々とし ていたらまだ実は小さいです。


こういった農業表現が本作ならではのヘンテコな設定と妙にマッチし,シュール な魅力につながっていたと想います。

たとえば,キャベツと一体化になって,陽人が,頭以外全部土に埋まって,キャベツ畑の キャベツのひとつになるシーンはかなり印象的ですし、農協の資材置き場で,無数に並んだ肥料袋をピョンピョン飛び跳ねるのも面白かったです。

一方で,シュールな中に結構きつい画が、ギャグなのかなんなのか分からないライ ンで急に飛び込んでくるのも特徴です。
まずはあの農薬をまるでシャワーを浴びるがごとく全身にかけまくるあのシーン です。
ちょっとさすがにシュールを通り越して,観てるこちらまで気分が悪くなりそう に感じました。その後の影響で途中でいきなりゲロったりしますし。

死んだ町子先生の彼氏の首無し遺体が急に登場して普通にしゃべるっていうのもありま すし,極めつけは最後の「脳」シーンです。もう多くは語れませんが笑

 

 

ヘンテコだけど語るべきポイントが多い怪作


こういうのが面白いかといわれると,大手を振って評価できないのが正直なとこ ろですが,あまり他の映画では見られないシーンが多くて、そこは結構感心すらしてしまいました。
観てる間はへんなストーリーだし,間延びするシーンも多かったけど,終わって 振り返ると結構画面に見入っていたような気がします。

ヘンテコだけど語る内容の多い観る価値のある映画でした。