世界最高峰の料理人の料理哲学を追うNetflixのオリジナルドキュメンタリーシリーズ 「シェフのテーブル」。
第2話の主人公は、ニューヨークのレストラン「ブルーヒル」及び農場と直結したレストラン「ブルーヒル•ストーンバーンズ」のシェフであり、農場経営者でもあるダン•バーバー。
食と農をひとつのテーマとしている本ブログにおいては、もっとも興味の中心にあるシェフのひとりであります。
最高の食材には最高の農法を
というのも、ダンはいわゆる「農場から食卓までの」の実践者です。
最高の料理には最高の食材を。最高の食材には最高の農法を。
つまり、食材にこだわるだけでなく、その食材が生産される過程にもこだわっています。
ダンは、自分自身でも食材を作っています。母の死後、荒れた牧草地を復活させるため、酪農をはじめ、良質な糞を拡散するため、鶏を飼いはじめ、森林の浸食を食い止めるため、山羊を飼い、空いた土地で豚を飼う。
それはさながら、生態系を作っていくかのようです。
面白いのはそうして出来た農場で生じる食材は余すことなく自身のレストランに提供します。元は除草のための山羊であってもです。
そして食材にこだわるだけあり、ダンの店では味付けはシンプル。
料理も野菜の形をそのまま活かしたようなメニューが多いのが印象的でした。
とにかくたくさんの変わった形の野菜が盛られたり、その種類の野菜をさばくのは大変そう。実際に、番組ではかなりダン自身が厨房に立って、いそいそと料理や指示を出している姿が印象的でした。
さらにダンは農家とのつながりも大切にします。農家と一緒に新しい品種の改良に取り組んだしているのです。例えば、普通のバターナッツよりも小さくて味が濃いものが登場します。
生産性や輸送性よりも、料理人が必要とするものを生産する。いわばオーダーメイドの野菜づくりも言え、現代的な農業のあり方のひとつだと感じました。
料理を通じて食や農の未来を伝える。
そんな使命感にも似た思いをダンからは感じます。そして彼はそのことに対してとてもストイック。
一方で、時に料理の世界のしんどさをこぼします。
子供への罪悪感も持っています。
何かこう、体力も精神もギリギリの中で、自分がやらねば誰がやるという使命を寄る辺に前へ前へ突き進む決意のようなものも感じました。
料理人はただお客さんを喜ばせるだけでなく、そこからメッセージを伝え社会を変革していく。
そこをやり切るところが世界最高峰なのだと感じました。