三児の父はスキマ時間でカルチャーライフ

仕事も趣味も育児も妥協しない。週末菜園家が、三児の子どもたちを育てながら、家事と仕事のスキマ時間を創って、映画や農業で心豊かな生活を送るブログ

TBSラジオ session22 原発事故が引き起こした食の分断をどう乗り越えるのか?がこれからの生産者と消費者の関係を考える神回でした。

TBSラジオで毎週夜22時から放送されている荻上チキのsession22。

【音声配信】特集「東日本大震災からまもなく7年。原発事故が引き起こした「食」をめぐる分断をいかに乗り越えるか」2018年3月8日(木)五十嵐泰正×藤田浩志×小松理虔×荻上チキ(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」22時~)

パーソナリティの荻上チキさんの論点整理力が半端なさすぎていつも泣ける思いで聞いています。

今回は福島原発事故から7年。原発事故が引き起こした食の分断をどう乗り越えるのか?というテーマの特集で、とても興味深かったので、備忘録的に記事を書いてみました。

 

2人の電話ゲストの風評への向き合い方に感銘

今回は、特に電話出演の2人のゲストのお話がとても印象に残っています。

福島の風評被害を無くすのでなく、それを一旦受け入れた上で、次に世の中にどのような価値を提供するか。

風評被害というマイナスをゼロにする活動でなく、より良いモノを作る。というある種作り手として、当たり前のスタンスをより明確に打ち出す。そんな姿勢にとても感銘を受けました。

 

ひとりは、農家兼野菜ソムリエの藤田浩志さん。

福島では農産物を出荷する前に、放射線検査を受ける、そんなことがもはや当たり前の日常になっているとのこと。そのためのコストがいかばかりか、大変なご苦労があるのだろうと想像すると同時に、実際に検査をしなければならない分、出荷が遅れるので生鮮品を取り扱うものとしては、不利な状況に置かれているというのが印象的でした。

 

農産物の中でも特に影響を受けているのがコメ

コメは全量全袋検査。近年では福島県産も全く放射線の検出がされていません。検査されている分ある意味他地域のコメより安全性が確実とも言えるのですが、消費者単位ではなく間に入っている卸業者単位で仕入れがない=棚に並ばないという状況があるようです。

 

アンケート結果では、福島県産の購入をためらう人は、12.7%と事故後の調査で最も少ない状況です。

しかしながら、棚に並ばなければ、消費者の目に触れることはないので、たとえ「気にしない」としても、業者による「売れないだろう」という判断が続けば、実際に「売れない」のです。

 

それでも藤田さんは、この状況は逆説的に、銘柄米ではなく、業務用米としての需要があるということであると解説します。

買われないものを嘆くのでなく、受け入れた上で活路を見出す。事故のあるなしに関わらず取るべき生産者としてのスタンスなのかもしれないと感じました。

 

福島県いわき市で市民有志で海洋調査を行う「うみラボ」の小松さん。

 

元々は福島第一原発をきっかけに、安心・安全のための情報発信として、自分たちで海洋の調査を行う活動を展開してきました。

しかしながら、調査をするうちに、その魚や魚が食べる餌によっても放射線の多い少ないが様々であることが分かってきました。

つまり、放射線の検出について調べるためには、福島の海、生き物の生態のことを理解することが必要だということなのです。

海への理解は、そのまま福島県産海産物の魅力の発見に繋がります。

本来であれば、風評払拭のために、仕方がなく行うものである海洋調査。それを前向きに捉え、さらに付加価値を見出すというプロセスは目から鱗でした。

この辺りもお二方に共通するところだと感じました。

 

あるべき消費者と生産者の関係を考える

さらにお二人の共通点として興味深かったのは消費者との関係性についてです。

生産者も消費者も、東電や原発推進してきた政府に対してみれば、いわば同じ被害者です。

一方で、生産者と消費者の間の関係となると、福島県産の農産物を買う/買わないの対立を生み出しているまさに悲劇となるのだと感じていました。

しかしながら、両者とも消費者とのコミュニケーションによって、個別の取引においては「あなたのところの農産物であれば買う」という状況を作っています。

この段階に入ると事故の存在というのは関係無い次元の話になるのです。

 

同じ土俵に立って、取引してほしいという藤田さん。

ことさらに福島県産を敬遠するのでなく、わざわざ応援のために買うのでもなく、

純粋に魅力的な農産物として福島の食べ物を購入する。

それには、生産者の努力も必要だし、消費者も思考停止してはいけない。

そんな一つ上の段階の関係性がこれから必要になってくるのだと思います。