三児の父はスキマ時間でカルチャーライフ フロム京都

三児 レイ アスカ シンジを育てながら、スキマ時間でカルチャー情報を発信。働き方改革時代の心豊かな生活をお届けします。

フォード vs フェラーリ レースの見方を180度変えてくれた作品ー男たちの熱い熱い闘い

 

 

 

レースの見方を180度変えてくれた作品

 

ル・マン24時間耐久レースと聞くと、大学の頃を思い出します。

サークル内にレースの熱心なファンがいたからです。

さほど興味もなかった私も、レースのテレビ中継を見るからと誘われ、夜な夜な友人宅に集まっていたのを覚えています。

 

はじめて観た時は、「意外に地味だな」っていう印象でした。

1分1秒を競うレースでありながら、延々と同じコースを周回するので、思った以上に単調なレースシーン。それでも見ているとマシントラブルや抜いたり抜かれたりがあったりと盛り上がる部分もあるので,BGM的に流し見する分には良いかな、そんな印象だったのです。

 

そんなル・マンに対する舐めたイメージを180度ひっくり返してしまう映画が

「フォードvsフェラーリ」なんです。

 

映画冒頭でも語られるエンジンの回転数が7,000を超える世界。

エンジンの爆音,溶けていく景色、一瞬の判断で行うドライビングスキル。

その一端を体感できる映画になっています。

その世界の存在を知らずしてル・マンを観るのは、ルールを分からずに野球を観るのと同じだと感じました。

 

地味だなんて言ってすみません,と言いたい。

めちゃめちゃ熱い世界でした。

そして映画本編はもっともっと熱い,男たちの闘いを描いた作品でした。

 

あらすじ

 

この映画は実話にもとづいています。

自動車産業最大手のフォードがレース業界に参入、フェラーリの買収を試みるも失敗したことをきっかけに,妥当フェラーリを目指す話です。フォード社は元レーサーでレースカーのプロデューサーのキャロル・シェルビーを雇い,レースカーを自社開発。キャロルは荒くれものだが敏腕のケン・マイルズをレーサーに迎え,ル・マンでの勝利を目指します。

 

あらすじだけを聞くと、確かにフォードVSフェラーリなのですが、この映画では様々な闘いや対立が描かれています。そこに、色々な人間ドラマが練りこまれているのです。

 

ハリウッド版の半沢直樹

 

まずは、フォード内での対立の話。

キャロル・シェルビーとフォード副社長との闘いです。この部分が本作がハリウッド版半沢直樹と言われるゆえんでしょう。

副社長は、ケン・マイルズのことを良く思っておらず、わざとレースのメンバーから外したりと露骨な嫌がらせをしてきます。キャロルからすれば、ケンは単にレーサーであるだけでなく、レーシングカーを一緒に開発している仲間です。マシンのことを良く分かっているという意味においても、ケンをかなり信頼しているので、次のレースでは、ケン・マイルズを選んでもらおうと、ある方法で社長を直々に説得しようとたくらむのです。

 

そのある方法というのが、言葉でなくレーシングカーの凄さだけで説得させるやり方になっていて、描き方としてとてもうまいんです。

さらにうまいと思ったのが、社長が説得させられるのと同時に映画を観ている我々も説得させられるということです。スクリーンを通じて、社長と同じ経験を疑似的にするのです。

映画のその場面において、社長と私たちのレーシングマシンに対する理解は同じです。レーシングカーなんてただの早い車でしょう、なんて思っているとバカをみます。

普段乗っている乗用車とは根本的に車のつくりが違うし、スピードの感じ方も違う、運転にしても全く違うスキルが要求されます。そのことが実際の乗車シーンを通じて体で感じることができるのです。この場面は、映画館の爆音さらには4DXなどでみるとより感じられる名シーンになっていました。

 

このシーンに限らず、本作は車のシーンが本当にすごい。

観ているこちらの息が苦しくなるほどのスピード感を画面で感じられるからです。運転手や車のタイヤ目線で見せられるカメラアングルのおかげだと思います。

これは,冒頭紹介したテレビ中継の上から見た視点と比べていただければ、臨場感の差は歴然です。これこそ映画でしかできない体験でしょう。

 

キャロル・シェルビーとフォード副社長との闘いは全編を通じて描かれています。ハリウッド版半沢直樹と言われるのも納得ですが,ラストは「倍返し」で終わらず、ほろ苦いシーンもあるので注目してみてください。

 

ケン・マイルズと家族の関係に男泣き

 

ケン・マイルズとその家族との関係性も見どころとなっています。

この手の映画には珍しくケンの奥さんは、レースヘの良き理解者でありましtこ。むしろ,ケンが二の足を踏んでいると、叱咤激励したは奥さんの方でした。

ケンの運営する自動車整備工場を続けないと、お金がない。そんなとき妻は家庭を重視して、仕事と家庭を対立させるというのがよくある構図ですが、この作品ではあえてそれをせずに 妻がケンを後押しする方向で描いているのが特徴的だと思いました。

 

このことは映画のラストで起こるショッキングな出来事への配慮であるともいえます。このとき、ケンのことであまりに家族と仕事の対立をあおると後味が悪くなりすぎるのを避けたのかもしれません。

 

奥さんついでに息子さんの話もしておきましょう。息子さんは、映画「ワンダー君は太陽」で主人公の親友役のあの子役。とてもキュートな少年です。

今回も犬顔なのもあいまって,お父さんであるケン・マイルズにころころとなついている姿をみていると顔がほころびます。

父親に対して非常に尊敬している一方,ケンがレースカー調整中の事故以降,途端に犬系の困り顔になってお父さんの仕事を心配しはじめるのがまたかわいらしいんです。

ケンと妻、その息子さんとの微妙な関係性の変化がよりケンの物語の厚みを増しているといえます。

 

受け継がれていく意志ースパナに込められた思い

 

そして終盤に至っては、ケン・マイルズの自分自身との闘いが描かれます。

ケン・マイルズはル・マンレースでの最後の最後にある選択を迫られることになります。その選択は、まさに男の選択。エンジン7,000回転以上の世界に至ったケンの孤独の闘いの末にみた結論を是非とも見届けてみてください。

 

最後にケン・マイルズとキャロル・シェルビーとの関係について触れます。このふたりは闘いではなく、同志として描かれているので、これで触れませんでしたが、スパナ演出がすばらしかったので一言だけ。二人の関係は,スパナで描かれます。キャロルが冒頭ケン・マイルズをレーサーとして迎え入れようと説得するときに、ケンが投げたスパナ。そのスパナはキャロルが受け取り,キャロルの会社に額にはめ込まれて飾られることになります。物語の最後の最後,そのスパナがどこに渡っていくか,見届けてこの映画は幕を閉じます。

 

レーシングカー以上に熱い男たちの闘いが描かれた本作。車に興味が無くても,その熱い世界に引き込まれること必至です。ジャンルで映画を食わず嫌いしたくない人にとっては売ってつけの作品です。