先週末は寒かったですね。
関東の方は、雪も降っていたようです。
この数週間暖かい日が続き、桜も見ごろを迎えていたので、気分はすっかり春になってたのが、冬に逆戻りしたような天気でした。
昨今のコロナ情勢もあいまって、春めいていた気持ちまで冬になってしまった気分です。
とはいえ、畑の作業は止められません。
借りている菜園で、そろそろ夏野菜の準備を進めなければ間に合わないのです。
その日は、ネギや春菊の最後の収穫と収穫し終わったブロッコリーの片づけ作業を行いました。
畑の土は、野菜にとってのベッドと例えられます。
畑の土をフカフカにすることで、野菜の生育が良くなるのです。だから、フカフカのベッドをつくるのが、我々栽培者の役目です。
秋冬野菜が終わり、夏野菜の準備をするには、いわばベッドの入れ替え作業が必要になります。
ちょうど、ホテルの宿泊者が変わるときに、ベッドメイキングする必要があるのと似ています。
ただ、野菜づくりにおけるベッドメイキングは、ホテルのそれと違って、シーツを変えれば済む話ではありません。
ベッドごと交換する必要があります。
例えば、今回収穫し終わった春菊をみてみたいと思います。
春菊は、伸びた葉っぱを摘み取るような格好で収穫します。
ですから、収穫が終わったとしても、春菊の根本と根っこはまだ畑に残っています。
畑を片付けるときは、春菊を根っこごと引っこ抜きます。
ご覧いただけますでしょうか?
春菊は、土の上もわさわさと大きくなりますが、同じかそれ以上に地中にも根っこが拡がっていることがわかります。
ちょっと写真ではわかりにくいかもしれません。
ただ、この写真にしても、実は掘り出す過程で根っこをブチブチと切っていますので、今写真で見えている以上に、根っこは土の中で広がっていると考えられます。
もうほとんど、土は根っこと一体になっていると言っても過言ではありません。
これはちょうど、低反発なベッドを長年使用していると、ベッドがその人の形に跡がついて、反発力がなくなり、固くなっているのと同じです。
前の人が使用し、固くなったベッドでは、次に来る人にとっては都合がよくありません。
ですから、シーツだけでなくベッドからすべて交換する必要があるのです。
とはいえ、畑の土をまるごと交換するのは、現実的ではありません。
そのためには自然の力を借りて、時間をかけて元にもどしていく必要があります。
たとえば肥料。
野菜づくりでは、野菜はベッドから動けないので、ベッドで食事をします。
その栄養分はベッド、つまり土の中に含まれているのです。
ですから、前の人が育った後は、肥料がカラカラの状態です。
土づくりの一つとして、肥料を入れてあげる必要があるのです。
また、同じく、野菜は動けないので、トイレもベッドでします。
老廃物がたまっているので、微生物に分解してもらう必要があります。
野菜にとっての老廃物には、先ほど掘り上げるときにぶちぶちと切った根っこの切れ端なども含まれます。
堆肥と呼ばれる微生物のエサをいれてあげます。
微生物に溜まった老廃物を分解してもらうのです。
また、老廃物がたまっていると、雑菌が増えやすい状態になっています。
だから、ホテルのトイレと同じく、消毒をしてあげる必要があります。
これらの作業は、2、3週間かけてじっくり行います。微生物は人間と違ってチャカチャカは動きません。ゆっくり、じわーっと効果を発揮するのです。
今回菜園に来たときは、まずは畑に残ったものを整理して、ベッドを掃除した段階です。
肥料や堆肥は来週以降にする予定なので、その時にまたお話します。
今回は、消毒を行いました。
苦土石灰です。
石灰は、農薬ではありませんが、菌の繁殖を抑えると言われています。
アルコール消毒くらいの感覚でしょうか。
石灰を練りこんで消毒終了です。
あとは、先ほど言っていた、根っこが残っており、微生物に分解してもらうため、土を混ぜこみ、今週の作業は終わりです。
どうでしょうか? さながら、野菜の土づくりはホテルのルームメイキングであることがお分かりになったことと思います。
野菜作り、本などで見ていると、どうも機械的な手順として、書かれていることが多いです。
なぜこの作業が必要なのか、理論を分かった上で作業すると、同じ作業をしていても楽しいですよね。
野菜の気持ちになって育てよう、なんて言い方をしますが、本当にそのとおりで野菜にとって最適な環境を整えることを考えることで、よい野菜づくりにつながるのです。
農業は野菜に対するサービス業だというスタンスで取り組むと成功するかもしれないですね。