高校時代、学校の定期試験が終わると、友人らと一緒にテーマパークに遊びに出掛けました。
試験最終日の気晴らしでした。
向かった先は、長島スパーランド、三重県にあるテーマパークです。
温泉やホテル、アウトレットモールなどが併設されており、長島スパーランドとひっくるめて、長島リゾートなんて呼ばれています。
長島スパーランドの魅力はなんといっても、手軽で面白いことです。
同じテーマパークの王者である、東京ディズニーランドやUSJは、エンターテインメント施設として、規模も質も、最大級です。。
でも、入場料が高かったり、かなり混雑していたり、遊びに行くには準備が必要な場所でもあります。
ディズニーランドは特に、「攻略本」なる本まで出ていますよね。
遊びに行くのに「攻略」というのも大袈裟な気がしますが、入念に準備をしていかないと、ディスニーランドの魅力の半分も味わうことができないまま、1日が終わってしまうなんてこともあります。
その点、長島スパーランドは手軽なんです。
高校から近かったということもありますが、長島スパーランドに行こうと決めたのは、試験が終わるその日でした。
混雑具合も、ディズニーやUSJのそれに比べたら、全然違います。
テーマパークとしての質が低いかと言われたら、そうでもありません。
木製ジェットコースターのホワイトサイクロンや、高低差とかスピードか何かでギネスにも登録されたスティールドラゴンは大人になった今でも楽しめるアトラクションです。
確かに、キャスト含めてサービスの質やテーマパーク全体の洗練さと比較したら、ディズニーには及ばないでしょう。
でも高校生が、試験帰りにふらりと立ち寄って、満喫できるくらいには楽しめる施設。
それが長島スパーランドです。
前置きが長くなりました。
何が言いたいのか。
つまり、同じテーマパークでも、最上級に楽しめる施設もいいけど、気軽に楽しめるものも良い。
先日観た映画作品「Exit」は、まさに長島スパーランドのようなエンターテインメント作品でした。
気軽に観れるけど侮れない韓国映画
2019年公開の韓国映画なんですが、これが気軽に観れるけど侮れない最高のエンタメに仕上がっていました。
ジャンルは、パニック映画になります。
韓国の街にテロ行為で有毒ガスがまかれて、いかに都市から脱出するか、というストーリーです。
設定だけ聞くと、重たい映画を想像するかもしれないですが、中身はかなりライトな仕上がりになっています。
パニック映画でありながら、コメディ感満載で、まさに韓国お得意のジャンルがミックスされた作品になっています。
あれだけ、コメディに寄せながら、ちゃんとハラハラドキドキする感覚というのが、今年の傑作「パラサイト」的でもあると感じています。
ツッコミどころも多い
ただ、本作に関して言えば、設定そのものが洗練されているというわけではありません。
むしろいわゆる「ツッコミどころ」が多い作品でもあります。
まずは、誰もが気になると思いますのが、毒ガスの見える化です。
有毒ガスが散布されるのですが、その有毒ガスが、いつまでも目に見える形、つまり霧のような格好で主人公たちに迫ってくるという設定です。
ある意味、映画的には効果的とも言えます。
今回主人公たちがビルの屋上に向かって登るシーンが描かれるので、もうすぐ下まで有毒ガスが迫っているということが視覚的に分かるからです。
でも、普通は気体なので、あっという間に拡散するものと考えられます。
気体の動きがはっきりと目に見えるのは違和感でした。
また、中盤までは、有毒ガスから逃れるために、屋上へ向かうというお話でした。
それが終盤にかけては、より高いところを目指すということで、ビルからビルへ横移動する描写が増えます。はっきりと描写するシーンもありますが、省略もされていて、有毒ガスが蔓延するなか、どうやって目的地までたどり着いたのか、分かり辛さもありました。
そう言ったツッコミどころは、リアリティを下げるので気になるところです。
ただ、映画の空気がコメディ寄りなので、その荒唐無稽さが逆に良いかもしれない。
また、場面ごとのエンターテインメントがしっかり面白いので、全体としては気にならなくなっています。
長島スパーランドも、ディズニーと比べルト、テーマパークの雰囲気は洗練されていませんし、キャストのサービスも、格別良いという訳でもありません。
でも、そもそも長島スパーランドにそういうことは求めていないし、なくても十分アトラクションの素材として楽しめるものになっています。
exitも同じことが言えます。
設定の雑さは目立ちますが、それを補ってあまりあるエンターテインメントとしての面白さに溢れている作品なんです。
韓国のコメディ感の強い冒頭
まずは、韓国のコメディ感が面白い。
有毒ガスが撒かれるまでのお話。
主に登場人物の紹介にあたる場面ですが、主人公ヨンナムの公園での鉄棒シーンが無駄にチープなのがまず笑えます。とてもこの先パニック映画になるとは思えない始まり方です。
ある意味そのギャップが良いのかもしれません。
正直私は、観始めてからそのチープさに、観る映画間違えたかな、と思ったぐらいです。
でも見進めると、だんだんと世界観にハマっていきます。
決定的なのは、主人公ヨンナムのお母さんの「古希」のお祝いのシーンです。
まずもって、韓国の親を大切にする文化というものがビンビンに伝わってきます。
なんといっても、結婚披露宴みたくホテルで宴会場を借りて、高砂まで作って両親を祝っているのですから。
このやり方は韓国ではメジャーなんでしょうか? ちょっと気になってしまいました。
そして、そこに登場するヨンナムの親類が、また軽いキャラたちばかりで、カラオケや余興で大騒ぎします。
ここまで来ても、まだパニックになる気配すらありません。
あれ、やっぱり観る映画間違えたのかな、と思ってしまいました。
しかし、そこから物語は一気に動きます。
いよいよ有毒ガスが撒かれるのです。
アイデアのつるべ打ちの脱出劇
そこからはまさにエンターテインメント。
言わばアイデアの玉手箱と言った感じで、あの手この手で有毒ガスから逃れるために奮闘する姿が描かれます。
有毒ガスが焼肉屋の排気口から拡散されるアイデアにはなるほど、とうなされましたし、
屋上からSOSを発信する、叔父さんの行動には笑うしかありません。
ビルを登ったり、ビルとビルの間を進むのにも、アイデアのつるべ打ちとなっていて、観ていて飽きないのです。
まさに右へ左へ上へ下へのジェットコースター気分です。
たまに、軽ーいツイストが効いているから、単なるジェットコースターじゃないのが、面白いんですよね。その一番は、ドローン描写でしょうか? ああいうドローンの使い方はとても現代的でしたね。
庶民的な役者人の演技に親近感
役者陣も良かったです。
主人公ヨンナムもどこか、頼りにならなそうな風体なのですが、彼の活躍をみるにつけてどんどんとファンになっていく感覚がありました。
こういうヒーローものの主人公ってモテて当たり前だけど、この映画の主人公ヨンナムは体力はあるけど、ちょっと抜けている部分もあって、庶民に近い感じがしたんですよね。
そんな彼がヒロインと一緒に問題を解決していく様をみると、こちらまで勇気をもらえました。
主人公とヒロインの演技も見ていて自然体といいますか、息のぴったりあった演じ方をされていて、本当に見ていて心地が良い映画だな、と思いました。
最後の遠回しな告白シーンなんかは、下手なラブコメより、よっぽどジーンときます。個人的に。
物語も極めてシンプルなので、本当に肩肘はらずに見れますし、映画の解釈を語り合うというよりかは、観る行為そのものが楽しい体験となっています。まさに冒頭説明した長島スパーランドのような、お手軽だけどちゃんとエンターテイメントしている作品になっているんです。
実際、上映時間も100分程度と短めなので、映画観たいけど、重いのはちょっと、っていう日にめちゃくちゃおすすめの一本となっているので、是非見てみてください。