三児の父はスキマ時間でカルチャーライフ

仕事も趣味も育児も妥協しない。週末菜園家が、三児の子どもたちを育てながら、家事と仕事のスキマ時間を創って、映画や農業で心豊かな生活を送るブログ

映画「アナと雪の女王2」感想レビュー エルサの自分探しの旅

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マズローの欲求5段階説って聞いたことがありますでしょうか?

マズローという心理学者は、人の欲求はピラミッドのように5段階の構造を持っていると言いました。下の欲求が満たされれば、その次の欲求に。その欲求が満たされれば、その上の階層の欲求に、人はピラミッドを登るように、欲望を満たすことを求めていくというものです。

 

一番下の階層は生理的欲求です。

つまり、ご飯を食べる、寝るなどの人間が生きていくための最低限必要な欲求です。

 

その次が、安全欲求、社会的欲求、尊厳欲求、自己実現欲求と続いていきます。

 

昨年公開された「アナと雪の女王2」は前作とあわせて、まさにマズローの欲求の階段を駆け上がっていく映画だと感じました。

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マズローの5段階欲求

 

自分探しの旅を描いてきたアナと雪の女王

思えばアナと雪の女王は、1でも2でも、エルサの自分探しの旅が描かれてきました。

でも、1と2では、その自分探しの旅の性質は随分と違うものでした。

 

特に2作目におけるエルサは、人は社会での自分の役割に気付いた時、こんなにも輝けるものか、と個人的には1作目以上に心を揺さぶる物語になっていると思います。

一方、その描き方は、神話や哲学に近く、ある意味子供たちに大ヒットしたあの続編であることを考えると、大変な意欲作でしょう。

 

前作が売れたから続編を作りました、と感じさせないくらいに(実際はそうなんでしょうが)

テーマ的なつながりと映画づくりとしてのこだわりが見える作品になっていると思います。

 

第1作はエルサが孤独からの解放を描く

 

まず、アナと雪の女王第1作を振り返ります。

これも、エルサの自分探しの旅でありました。

生まれながらに魔法の力を持って生まれてエルサ。その力は強大すぎて、他者と距離を置いて生きてきました。他者に刃を向ける出来事もあって、エルサは他者を拒絶し、孤独に生きる道を選んでしまいます。妹であるアナが真実の愛の力で、魔法の力を持ったエルサを氷の孤独から解放するのです。

 

1作目では、そんなエルサというマイノリティーが社会に受け入れられる過程が描かれていきました。

つまり、冒頭でいうマズローの欲求でいうところの、社会的欲求です。

誰もが、会社に入ったり、部活に入ったりしながら、社会に受け入れられることを望みます。

1作目のラスト、魔法の力を持ったエルサは、氷の世界からアレンデール王国の国交解放に至ったように、心も社会に対してオープンになっていったのです。

 

エルサの心の内面だけでなく、夏が消えたアレンデール王国の危機、王国をのっとろうとする明確な悪役の存在などが、物語の背骨としてあることで、分かりやすいエンターテインメントとして仕上がっていました。あと、音楽の魅力は言わずもがな、でしょう。

 

心の解放を描く第2作

 

一方で、2作目ではエルサの心の内面によりクローズアップした物語になっています。

物語の設定自体が、未知の世界からの呼びかけに対して冒険に出ることを決める。

まさに自分探しの旅です。

そもそも、物語冒頭、アナとエルサの両親が語るお話がすでに御伽話のようなテイスト。

そのため、お話自体は1ほど分かりやすくはありません。

続編にも関わらず、次々登場する新用語にちょっと追いつくのが大変なくらいです。

1作目のイメージから印象が違うと感じるかもしれません。

画面づくりもそう。1は雪の白さが際立つ場面が多く感じましたが、2では一転してダークなトーンです。

 

話を戻しましょう。

とにかく全体的に話がふわふわとしている部分があるので、この話がどこに向かうのか中盤までは特に掴みづらい印象でした。

 

冒頭から中盤にかけて、その抽象さ加減が、あまりいい方向に働いていなかったのですが、でも、そこはディズニー映画。エルサが物語の真実に近づくに連れてちゃんと盛り上がりが用意されていきます。その盛り上がり方に比例してどんどん神話的シーンが多くなってきます。

終盤のエルサのダークシーという荒波を乗り越える場面で一気に抽象から神話へと格上げされていくのです。

 

 

そしてエルサが荒波を乗り越えた先にある、アートハラン。

そこでの映像表現は、神秘的でさえあります。

そしてついに自分の正体と役割に気付いたエルサ。

1、2通じて一番いい表情だったように思います。エルサっていつもちょっと憂いの表情があると思いません?

ビジュアルも白ベースの配色に変わって一層神秘的になりました。

何よりあの馬に乗って駆ける姿がかっこいい!

 

 

そう、この場面でエルサは、内面的欲求を見たします。

つまり、マズローでいうところの尊厳への欲求や自己実現への欲求です。

社会に自分の存在が認められ、孤独からの解放を願った前作。

それは外向きに対する欲求です。

 

本作では、自分がこの社会で生きる意味を見直す。

いかに社会で自分の自己実現を果たすか、の内面的欲求です。

 

エルサは、マズローの5段階の欲求を全て登り詰めることに成功するのです。

だから、2のエルサはめちゃめちゃすがすがしい表情、憑き物が取れたような満ち足りた表情になっているのです。

 

そんなエルサの姿を見ていると、自分も何か社会で自己実現したい、そんな気にさせられます。

魔法があってもなくても、人生を輝かせることが出来るのは、自分の内面との向き合い方次第であると教えてくれた気がします。

 

そんなテーマの本作は子供向け映画と言えるのでしょうか。

もちろん、オラフは可愛いし、アナも可愛いし、エルサ以外のメンバーのアンサンブルの心地良さもある映画になっているので子供も楽しめるでしょう。

 

でも、テーマそのものは骨太で、神話的で哲学的なので、前作の後にこの作品を持ってきたディズニーはさすが、と敬意を表すばかりです。