三児の父はスキマ時間でカルチャーライフ

仕事も趣味も育児も妥協しない。週末菜園家が、三児の子どもたちを育てながら、家事と仕事のスキマ時間を創って、映画や農業で心豊かな生活を送るブログ

【テネット予習シリーズ】インターステラーは時の魔術師ノーラン史上最大スケールの映画

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繰り返し時を描いてきたクリストファー・ノーラン

クリストファー・ノーランは時の魔術師。

最新作「テネット」に向けて、「インセプション」「インターステラー」と、ノーランの代表作を見返した私の感想です。

 


ノーラン監督は繰り返し、「時のズレ」を表現してきました。

初期作品「メメント」では、時間軸を逆行させ、

インセプション」では、現実で流れる時間と夢の中で流れる時間のズレを描いています。

 


時間のズレというのは、観る人の心をつかみます。

現実世界では、絶対に体感できないことだからです。映画の中でしか体験できないからこそ、私たちは映画館に足を運びます。

インターステラー」は、その極みのような映画になっていました。


時間のズレを圧倒的なスケールで描いた傑作と思っています。

 


時間のズレ自体は、他の作品でも描かれてきたことです。

たとえば、A地点とB地点で時間の流れ方が違うというような設定は、ドラゴンボールでいうところの「精神と時の部屋」です。

子どもの頃から慣れしたしんだ設定ですが、それはあくまでも漫画の世界の話でした。

 


時間のズレは現実にあり得る、と聞いたのは高校の頃でした。

昔、授業ではじめて「ウラシマ効果」というものを聞いたのです。

地球からロケットで宇宙に飛び出すと宇宙と地球では時間の流れ方が違うから、宇宙から戻ってきた時には、地球のみんなは年老いてしまっている。

そんな話だったと思います。

 

最大スケールの「ウラシマ効果


ひらたく言えば、インターステラーは圧倒的なスケールで描く「ウラシマ効果」です。

本作は、気候変動による食糧難で絶滅の危機に瀕している地球で、移住先となる惑星を探すために宇宙の旅に出るSF映画となっています。そこで、先程のウラシマ効果が登場します。

 


インターステラーが他作品と違うのは、徹底したリアリティを土台に作られていることです。アインシュタイン相対性理論よろしく、ゴリゴリの物理学に裏打ちされた設定が描かれています。実際本作は、キップ・ソーンという理論物理学者が映画の科学考証に入っています。

 


ワームホールブラックホール、4次元空間。

お馴染みのSF設定も、現実世界の延長であるリアリティのある表現として、ロマンに溢れている作品なんです。

 


本作のウラシマ効果の表現はリアルすぎてゾッとします。

思わず宇宙怖いと思ってしまうほどです。

 


たとえば、人類が住める可能性がある惑星の探索の話をします。

はじめて訪れた惑星は、重力の影響で1時間過ごすと、外では数年間の時間が経過するという恐ろしい惑星でした。

映画では、10分程度のシーンにも関わらず、地球では23年時間が経過してしまいます。

惑星に行って、宇宙船に戻ったら乗組員は年老いているわ、地球からのメッセージは23年分溜まっているわで、大失敗を犯してしまうのです。

 


ちょっとした選択が地球の未来を左右する。

そのことが実感として感じさせられる名シーンだと思います。

 

 

 

それだけでも、十分なスケールと言えますが、本作はそのさらに上をいきます。

時間のズレだけでなく、時空間の旅に発展するのです。

 


4次元空間です。

ドラえもんでも描かれているアレです。

本作では、一応それに対して理論的な解釈がされています。

ブラックホール特異点に行くことで4次元空間へと入るというものです。

時の魔術師は時空の魔術師に進化したのです。


そこから、次々と展開される伏線の回収は、鳥肌ものでした。

 

圧倒的な映像と物理と哲学


実は、クリストファー・ノーラン監督は、いつもこの辺りは紙一重です。

4次元空間なんてものを持ち出せば、一歩間違えれば嘘臭くて、しらけます。

なんといってもドラえもんと同じ概念を描いているのですから。

 


でも、圧倒的な映像による説得力とそれまでの物理で裏打ちされた説明で乗り切ります。

観ている間はほとんど違和感なくみれるのは、やはり演出の手腕がすごいのでしょう。

 


そしてこの物理ゴリゴリの本作。

ややもすると難解すぎてお客さんに伝わらない懸念もあったと思います。

そこも絶妙に親子関係や「愛」というものも織り交ぜてエンターテインメント性を高めているところが特徴です。

 


宇宙の旅の最中、描かれるのは、地上に残った子どもや親との切ない通信。

そして、旅先におけるある「葛藤」。

人類の存亡をかけた旅なのに、そこにはさまれる個人の感情に焦点があてられるから、物理は理解できていなくても、そのストーリーに固唾を飲む人は多いはずです。

 


最後には時空を超えた親子の「愛」すらも、物理法則の中で、客観的に観測可能なものとして描かれます。

 


いよいよスケールの大きさがまさに宇宙どころか哲学的にすらなります。

でも、本作が世界的にヒットしたのはまさにそこでしょう。

時空を超えて、つながる親子の物語としてみれば、涙なしには語れない映画になっています。

時空をつかさどる者は神に近い。ノーランはまさに映画の神になりました。

 


何を隠そう、私はノーラン監督の作品の中では一番好きな映画です。

科学オタクが作ったエンタメ作品。もともと理系な私にささらないわけがありません。

 

 

 

今、映画館でノーラン作品を観ると、冒頭にて最新作テネットの予告が流れます。

テネットも、「時」を扱った作品であることが分かっています。

ノーランの真骨頂の映画だと言えます。これは期待せずにはいられません。

 

インターステラー(字幕版)