はじめは、子どもに付き合ってるだけのつもりだったはずが、最後には完全に感情移入してしまいました。
白状すると、年甲斐もなく涙を流しそうになってしまいました。
「年甲斐もなく」
実のところ、本作にこの言葉は当てはまらないのではないか。最後まで観てそう思いました。
それは本作は、完全に大人をターゲットしていたからです。
ですから、「年甲斐もなく泣く」という表現は間違っています。
相手は、本気で大人を泣かせにかかっているので、年齢不相応を表す「年甲斐」という言葉は当てはまらないのです。
思えば、そんなことはじめから気がつけることだったのかもしれません。
なぜなら、本作の映画主題歌は、Mr.childrenでした。
その時点で気づくべきだったのです。これが大人向けの映画だってこと。
ミスチルなんてデビューから30年近く経っている今やJPOPの大御所です。
私も大好きなアーティストです。
でも、デビュー30年ですよ?
明らかにドラえもんを好んで見るであろう小学校をターゲットにしていません。
その親世代を見据えたミスチルの起用です。
子どもが観に行くのに親も同伴する。
であれば、大人も楽しめるエンターテイメントにする必要がある。当たり前の話でした。
その広告塔にミスチルがなっているのです。
ドラえもんは、CMでガンガン流れていました。
娘が学校で、ドラえもん観た観てないの話になったのでしょう、家で四六時中ドラえもん観にいきたいと騒いでいました。私はまんまと、ミスチル主題歌だし、付き合ってあげるかとなったのです。
休日の映画館。私は小学生の長女レイちゃんと次女アスカちゃんと一緒に映画館に向かいます。さすがのドラえもん。
コロナで一席離して、座席が販売されていたこともありますが、ほぼ満席状態でした。
私ら3人は、一番前の席で観るはめになりました。
何年ぶりかな、映画ドラえもんなんて、思いながらライトな気持ちで鑑賞していました。
映画の内容に期待していませんでしたし、土日で眠たいし、映画館で暗いことを良いことに昼寝しようとさえ思っていました。
でも、予想以上に見入ってしまいました。
単純に大人が見ても面白い作品になっていました。いや、大人だからこそ面白い作品でした。
本作は、宣伝で大人を呼び込もうとしているわけではない。
ストーリーで、完全に親の心を掴みにきている。そう感じたのです。
本作は、前半と後半に別れます。
前半は、恐竜の卵から返ったミュウとキュウの双子の恐竜を、のび太が親が代りとなって育てるパート。後半は、自立しつつある双子の恐竜を、元の恐竜の時代に戻し、別れを告げるパートです。
前半は、のび太が育てたことのない恐竜を、育て方をいろいろ調べたり聞いたりしながら、なんとか命をつないでいく話です。これは、はじめて子どもを育てる親の姿そのものです。子どもに対して無償の愛情を向けるのび太の姿に、自分の経験を重ね合わせた親は多いのではないでしょうか?
そして、後半の出来そこないだった恐竜がついに独り立ちしていく話。
よくある話といえばよくある話。ですが、今ここで劇場に足を運んでいるのは、まさに小学校低学年くらいの出来ることがどんどんと増えって言っている学年です。
そして一方、たくさんの壁にぶつかり始める年齢でもあります。得意不得意が徐々に分かれ始める年齢だと思うのです。
自立に向けて努力するけど、うまくいかない子どもが、努力でなんとか羽ばたけるようになる。
そんな年代を育てる大人にとっては、まさしく琴線に触れる映画になっていました。
これも完全に親世代をターゲティングされた設定だと言わざるを得ず、落涙を我慢するばかりだったのです。
子どもの成長、そして出来損ないと思われた子の努力が生命の進化につながる。
そんな壮大なドラマで、ドラえもんは大人の心をくすぐってきました。
ほら、これは今劇場に来ている、あなたとあなたの子どものストーリーだと語りかけてくるのです。どうしたって感情移入させられる作りになっていたのです。
そして極め付けは、大人も納得のストーリーテリング。
前半に散りばめられた伏線が、ややわざとらしいものも含め、鮮やかに回収されていく様は小学生向けと侮れない作りになっています。
タイムトラベルと歴史改変、現実の進化理論について、ドラえもんなりの解釈でエンタメ化しているのも上手いと思いました。
タイムトラベルの要素も含めて、ドラえもんやのび太の行動が、歴史を改変することなく、でも進化の歴史に答えを与えたのは、進化について知識を持っている大人も納得の設定だっと思います。
いろいろと書き連ねてきました。
でも、ひらたくいえば、今回のドラえもんは「大人も子どもも楽しめる作品」だということです。
いや、もしかしたら今までの映画ドラえもんシリーズは全部そういう思想だったのかもしれません。私が知らなかっただけで。
今回はのび太の新恐竜といタイトル。以前に「のび太の恐竜」という映画で大ヒットを飛ばしていたことを考えると、本作は、特に気合の入ったタイトル、それゆえの高クオリティだったのかもしれません。
いずれにせよ、ちょっと過去作も見返したくなるようなくらいには、私にはとても良い作品に感じました。
広告塔のミスチルで、のこのこ映画館に足を運んだ私は、まんまとドラえもんファンになった話でした。
周りに聞いていると、結構大人でもドラえもんファンって多いので、今後もリサーチ対象で注目していきたいと思います。