私は、現在3人の子供を育てています。
これまでにたくさんの絵本の読み聞かせをしてきました。
1,000回はくだらないほどだと思っています。
読み聞かせる立場としては、読んでいて楽しいのは、大人が読んでも楽しい作品です。
子供が読みたい! と言ってもってきても、大人のテンションが上がらない絵本も、正直あります。
今回紹介するのは、大人のテンションが上がる絵本です。
いや、理系に限られるかもしれません。
それはずばり、「かがくのとも」シリーズです。
妻がいつの間にか定期購読していたシリーズでした。
またおかしなものに手を出したのかと、何気なく手にとってパラパラとめくってみると、その出来の良さにちょっとびっくりしてしまいました。
幼児向け絵本と思ってナメていました。
注釈には、4歳以上のお子様向けと書いてあります。
4歳向けの絵本に、30代も後半にさしかかった大人が、圧倒されてしまいました。
ところで皆さん、「トリビアの泉」って知っていますか?
タモリさんが主役で、日常のウンチクを紹介するTV番組でした。
今はもうやっていませんが、放映当時は大流行していました。
トリビアの泉といえば、紹介されたウンチクに、出演者が「へぇー」と思った時に押す「へぇー」ボタン。
みんながなるほど、とか、知らなかった、と感じた雑学やウンチクに、「へぇー」ボタンを連打するのです。
そう、この「かがくのとも」シリーズは、絵本の名を借りたまさに「トリビアの泉」でした。
へぇーの連発です。
たとえば、「かがくのとも」シリーズの最高傑作「たんぽぽ」。
みなさんは「たんぽぽ」のことどれだけ知っていますか?
たんぽぽについて分かった気になっていませんか?
4歳向けの絵本にして、大人への挑戦状にも思える、この「たんぽぽ」という作品。
知っているようで知らない、「たんぽぽの世界」があますことなく描かれているのです。
にくいのが、たんぽぽなんていう、超身近な植物がテーマになっていることです。
例えば、宇宙がタイトルのトリビア絵本なんて、「へぇー」して当たり前なんです。
みんな宇宙のことなんて知らないのですから。
でも、たんぽぽ、というのは虚を突かれたテーマです。
たんぽぽってその辺に生えててどこにでもいる、いうなれば雑草です。
たんぽぽの綿毛を、「ふぅー」としたことのない人間なんてこの世にはいないでしょう。
そんな身近すぎるたんぽぽに、「へぇー」ボタンを押させるのだから、実力のある絵本なわけです。
圧巻は、根っこが描かれたページ。
たんぽぽの根っこってこんなことになってたんだ、と驚かされるばかりです。
さらには、根っこを切って、土に再度埋めるとどうなるか? 理科実験みたいなことまで、さらっと絵本の中でしています。
これはもはや、この凄さが4歳にわかるのか、といった内容です。
この現象を、ちゃんと習うのは高校の生物でしょう。
その内容がさらっと、描かれているのです。
まいりました。
すごい作品だなこれは、と思っておそるおそる裏面の著者ページをみると、
書いてありました。
「京都大学名誉教授監修。没2002年。」
なるほどこれは不朽の名作です。
京大監修ですから。
たかが絵本に本気出しすぎだろうと思います。
でも、たかが絵本であっても、身近な物事に、深い掘り起こしをしていくこのシリーズの凄みには、やっぱり京都大学の力が背景にあったんだ、と妙に納得もしてしまいました。
たんぽぽだけではありません。
スズメもあります。
街で見かけるスズメ。
これも、やっぱりあなたはどれくらいスズメのことを知っていますか?
と聞かれているようです。
スズメは、たんぽぽほどインパクトはないものの、ちゃんとスズメのイロハを教えてくれます。
「スズメって何を食べているの?」
そんな子供からの素朴な疑問に皆さん答えられるでしょうか?
この絵本は、わかりやすいビジュアルと共に、サラリと答えてくれます。
ビジュアルの力はすごいです。
虫を食っていると想像できる人は多いでしょう。
でも、どんな虫を食べているのかまで、的確に言える人は少ないのではないでしょうか?
そこを突いてくるのが、この「かがくのとも」シリーズなんです。
だんだんと恐ろしくなってきました。
あとは、生き物シリーズばかりではありません。
水道をテーマにした絵本もあります。
水道も、身近でありながら、地下を通っていますから、本当のところはどうなっているかわかりません。普段目の見えないところに焦点をあてる、このかがくのともシリーズにはやはり脱帽してしまいます。。
「絵本で一番おすすめのものは何か?」
今この質問を投げかけられたら、間違いなくこうおすすめするでしょう。
「かがくのとも」シリーズです。
なぜなら大人も子供も楽しめる作品だからです。
なまじ知識がある分、もしかしたら子供以上に、大人の知的好奇心を引く作品になっているかもしれません。
まずは、このかがくのともシリーズの中でも、一番の最高傑作「たんぽぽ」を手にとって読んでみてはいかがでしょうか?
新しい知への扉が開くきっかけになるかもしれません。