三児の父はスキマ時間でカルチャーライフ

仕事も趣味も育児も妥協しない。週末菜園家が、三児の子どもたちを育てながら、家事と仕事のスキマ時間を創って、映画や農業で心豊かな生活を送るブログ

IPM-総合的病害虫管理について

 今日は農業の病害虫防除の考え方として最近とりあげられることの多いIPMIntegrated Pest Management)について紹介します。

  IPMは直訳すれば、総合病害虫防除と言います。FAOが出している定義としては以下になります。

 

農作物に対する有害生物制御に応用可能な全ての技術を精緻に考慮し、それらの発生増加を抑制する適切な方法を総合的に組み合わせ、農薬やその他の防除対策の実施は経済的に正当なレベルに保ちつつ、人や環境へのリスクを軽減または最小限に抑えることを意味する。

 

 簡単にいうと、農薬だけに頼らず様々な防除方法を組み合わせることで人にも環境にもやさしい農業を実践しましょう、ということです。病害虫というのは実際には、農薬以外にも様々な防除方法があります。それらを総動員して、防除しましょう。病害虫を根絶するのでなく、経済的に被害を及ぼさない程度に数を抑えましょう。というのが基本的な考え方になります。

 

 農薬以外の防除方法とは、ほかに物理的防除法と生物的防除法があります。(農薬は化学的防除法)。

 

・物理的防除法

  これはネットを使って虫を防いでたり、輪作、つまりシーズンごとに植える作物を変えることで特定の病害虫を増やさないようにしたり、物理的に病害虫の発生を抑制したり、作物に来るのを防ぎます。その他、光や色を利用した方法も物理的防除になります。

 

・生物的防除

 これはフェロモン剤をまくことで虫たちの交配をかく乱させたり、天敵を導入することで病害虫の増加を防ぎます。生物学・生態学的特徴を利用した方法になります。

 

 

 ここで重要なのは、IPMは農薬(化学的防除)を否定するものではなく、むしろ重要な防除法のひとつと捉えることです。人にやさしい、環境にやさしいというと、なにか農薬を使ってはいけないイメージがありますが、それがIPMの考え方と農薬を使わない有機農業との違いです。

 

 そもそもIPMという考え方が出来た背景が、もちろん環境問題もあるのだけれども、農薬一辺倒の農業では、逆に病害虫の突発的な異常発生を引き起こしたり、抵抗性病害虫の発生といった農業経営上の技術の課題もあったわけですね。

 

 また、単に人や環境にやさしい、だけでなく農薬の使用回数減らす=コスト削減であったり、闇雲でなく発生予測を行って農薬を撒くといった農業のマネジメント的な観点からいっても是非普及して言って欲しい考え方だと思います。

 

 最後にIPMの考え方をさらに発展させたIBMIntegrated Biodiversity Management)について紹介します。これは日本人の桐谷圭治氏が提唱した考え方で、病害虫を根絶させるのでなく、経済的に被害が及ばない程度に病害虫を含めて農場内の生物多様性を確保するというものです。

 面白いのは病害虫を害虫ではなくただの虫、つまり生態系の一部として捉えることです。天敵がうまいこと機能していれば、害虫はいても壊滅的な被害にはなりません。 正直実効性という面では、すこし疑問ではありますが、害をなくすのでなく害を相対化するというのは有効な考え方だと思います。