強まる穀物自給率向上の声 進む都市化 農業人口、耕地面積の減少危惧
上記のニュースのように最近は中国でも日本と同じように食料自給率を向上しようという動きがあるようです。
記事の中で,食料自給率向上に目を向けなければならない理由として次のように記述されています。
物質的な豊かさが進むにつれ食生活も多様化、その基盤となる穀物もさまざまな種類が求められるようになり、供給圧力が高まる危険性もある。
これは日本における食料自給率低下の背景とまったく同じにあるといえます。高度経済成長期、経済的に豊かになることで,肉食文化・パン食文化が普及し,小麦や家畜の飼料の需要が高まりました。ただし、日本ではそれら穀物を栽培する風土になく,また輸入産物の方が安いため,外国産の小麦などの穀物に頼るようになったのです。そしてそれらが,自給できていない部分のほとんどであるといえるでしょう(牛や豚が国産でもエサに使う飼料が外国産ならその分は自給できていないことになります)。
さらに上記の記事は,次のように続きます。
いかに食糧安全保障を強化していくべきか-。この問いに呉副秘書長は「自給率を上げ、輸入に頼らない体制を構築するしかない」と強調する。
一般に,食物自給率を上げなければならないとするのは”食料安全保障上”ということになるんですが,それはつまり「有事」に備えて、という話になります。
ここでいう「有事」が,戦争などで,輸入に全く頼れない状況であるとすると,有事のときと平常時で食料生産の体制は大きく異なってくるでしょう。そんな状態では,食生活の多様化など言っていられない状況なのです。
逆に,有事において全く異なる食料生産体制に切り替えれば,食料自給率を大きく向上することが可能になると私は考えています。具体的に有事の際,取り得る対策としては,以下の三つが考えられると思います。
1.耕作放棄地を国等が買い取って耕作地にする。
埼玉県の面積だけあるとされる耕作放棄地で食料生産したら,自給率に向上するでしょう。
2.米食への回帰
自給できていない小麦を使わない,米中心の生活になれば、自給率に向上するでしょう。
3.肉食の控え
ただでさえ日常生活において摂食過剰気味な肉食を控えれば、自給率に向上するでしょう。
キューバは有機農業でほぼ100%な国として有名ですが,実際にはアメリカの経済制裁によって食料はおろか肥料や農薬も輸入に頼れなくなったので,誰もが農民となり,有機農業に励んだからだといいます。つまり厳戒体制だからこそ,なしえた言えます。
食料安全保障ということを考えるのであれば,現状の食料自給率よりも,有事の際に食料を自給できる農地や技術などでどれほど対応できるか,という潜在的な自給力が重要なのではないかと考えています。対策というのは,どういう状況に対応するのかを考えることが重要で、単に数字が下がったからといって上げればよいという話ではないと思うのです。