ムービーウォッチメンの予習編。
今回はアカデミー賞の有力候補にもなっているスリー・ビルボードということで、期待して観にいきました。
監督は、マーティン・マクドナー。過去作では「セブン・サイコパス」というものがあるようですが、未見です。
主役陣は、娘を殺され復習に燃えるミルドレッド役にフランシス・マクドーマンドさん
警察署長でミルドレッドの広告看板で名指しで批判されたウィロビー役のウディ・ハレルソンさん
差別主義でミルドレッドに敵対する警官のウィロビー役のサム・ロックウェルさん
本作のストーリーは、アメリカのミズーリの田舎町に3枚の看板が立てられるところから始まります。
1枚目は「娘はレイプされ殺された」
2枚目は「犯人はまだ捕まっていない」
3枚目は「どうしてなの?ウィルビー署長」
3枚の看板をきっかけに娘の母親ミルドレッドと警察の運命が動き始める。
結論から言いますと、すごく変な映画でした。
一言でジャンルを表すことが難しい映画です。表向きはクライム・サスペンスなんでしょうけど、そう単純ではありません。
予想できない展開や人物描写にクラクラする感じ。
ムービーウォッチメンで宇多丸さんは先週の「羊の木」評の際に変な映画だと仰られていましたが、個人的には羊の木以上に変な映画だと思いました。
変だと思う理由は3つありますが、以下完全ネタバレでお届けします。
- 1.展開が読めない。
- 2.ギャグなのかシリアスなのか。
- 3.良い人なのか悪い人なのか。
1.展開が読めない
上に書いたあらすじを見たとき、どんな映画を想像するでしょう?
警察の怠慢や不正を暴く社会派ドラマ?
復習に燃える母親の真犯人探し?
そのどちらでもありません。
どちらかと言うと登場人物たちの心理サスペンスに近いものがありますが、とにかく途中途中で
えっ!?
って言う出来事が予告なく起こるのです。
この話はどこに転がっていくのかと不安とワクワクです。
まずは看板で告発?されたウィロビー署長がミルドレッドに事情を説明しに行きます。
冒頭の雰囲気から、この映画は、ミルドレッド(被害者)とウィロビー(警察)の対決が描かれるのかと思っていると。
「実は事情があって、ガンなんだ。」とウィロビー。その場面を境に、今度はウィロビーの方に風が吹いてきて、どうやらミルドレッドは街で孤立し始めた。
なんて思っていると、そんなものもろともせず、神父に暴言吐いたり、体制側への対決姿勢。
やっぱり対決かと思うと、何とウィロビーの家族との幸せそうな交流のシーンが続き、そのままウィロビーが自死すると言うとんでもない展開に。
こんな感じで、〇〇かなぁって思っていると、びっくりするような展開が幾重にも重なります。
通常のサスペンスとは別の意味で続きが気になる構成となっています。
2.ギャグなのかシリアスなのか
本作はびっくりするような展開が何度も出てくるとお伝えしました。
それは基本的にはミルドレッドの暴力シーンです。なんかもうミルドレッドがカッコ良すぎて、やっていることは非常に暴力的でシリアスなのに、不思議とギャグに思えてくると言う。
極め付けはあの警察署に火炎瓶を投げつけるあのシーン。
流れているBGMも落ち着いたもので、署長からの手紙を読むディクソンで感動のシーンですらあるのに、あのおばちゃんが火炎瓶を投げつけると言う無茶苦茶ぶりにもはや狂気を感じるほどでした笑
3.良い人なのか悪い人なのか
これは先週の羊の木でもありました。
良い人かどうか。事実と演技と映画内における周囲の評価。それぞれに微妙にずれがあって、正直感情移入はしづらかったですが、このことが上でも述べた展開の読めなさと併せてサスペンス性を高めていました。
ミルドレッドは娘を殺された可哀想な人物とみることもできれば、完全に復習に取り憑かれたおばちゃんにも見える。
ウィロビー署長は、基本怠慢な警察署長だと私たちは初め思ったけど、家族思い、部下思いの優しいところもある。が、ミルドレッドには最後、ちょっとした復讐も行う。
ディクソンは、どうしようもないクズ警官ですが、最後自分なりの正義を全うしようとする。
それぞれに一面的に捉えることのできない人物像になっており、それがまた現実なんだろうな、と思わされました。
ラストシーンも、味わい深かったです。
最後、犯人とは違うレイプ魔を殺しに行くことで、ミルドレッドは自分の娘を殺された怒りを性犯罪一般にぶつける、ディクソンにとっては警官としての正義を貫く。そんな思いがあるのではないかと考えました。その中で自分の中でのけじめというか、一連の3枚の看板騒動を終わらせたかったんじゃないかと思います。
こうした終わり方も予想できないですよね。
あまり他に類を見ない作品なのは間違いないのでオススメです。