私が、昆虫食に興味を持ったのは、FAOが昆虫食を推奨するこの記事を読んだときです。私たちが普段タンパク源として摂取している牛や豚は、エサ・土地・水を大量に消費し、育てるのに高いコストがかかります。それにくらべ虫は、牛や豚ほどエサを必要としないし、可食部も多い、おまけに高タンパク、ミネラル、微量元素多いというわけです。
いや、頭では分かるけど、とはいえ昆虫ですよ。コオロギとか、幼虫ですよ。ウゲー
となること必至です。そもそも昆虫食というのは、いまや必要に迫られるというよりかは、もはや文化です。西洋人はあまり昆虫食の文化はない、むしろかなり嫌うようですが、タイなどアジアは伝統的に昆虫を食べる文化の地域が多いようですし、日本だって信州の方は有名です。
そんなわけで、昆虫食について勉強しようと内山昭一氏の「昆虫食入門」を読みましたが、これが素晴らしかったです。
昆虫料理研究家である筆者、読み始めていきなり衝撃を受けたのが、次のくだりです。
時々、筆者は一人で夜の雑木林に入って虫を食べることがある。原始哺乳類の感じた恐竜の恐怖をわずかでも追体験したいと考えたからだ。
すごいですよね、突き抜けている感があります。ただし、この一文に筆者の昆虫料理研究へのスタンスが凝縮されている気もします。というのは昆虫食への様々なアプローチ法です。心理学的視点、栄養学的視点、食糧資源の視点など多くの視点から昆虫食を語ります。てっきり、私は「昆虫はゲテモノだと思ってるだろうけど、本当はおいしい」とか「昆虫食は万能です」とか昆虫に過度に偏愛した雰囲気の内容なのかな、と思っていましたが、案外その語り口は冷静で、“驚異的な栄養”を旗印に昆虫食をメジャー化する目算はあえなくついえた、さらりと認めてしまうほどです。
すごいのは、かといって全く冷静かといわれたら、そうでもなくてやっぱり昆虫食への愛はガンガンに感じるのです。
いうならば、昆虫食に熱い思いは持っているけど決して押し付けがましくない。そんな良書だと思いました。昆虫食入門 (平凡社新書) (2012/04/15) 内山 昭一 商品詳細を見る |