本ブログでは、毎週TBSラジオ アフター6ジャンクションのムービーウォッチメンのコーナーで宇多丸さんの時評を聴く前に、予習で映画を鑑賞しています。
今回の課題映画は「クソ野郎と美しき世界」です。
元SMAPの3人がジャニーズ事務所から独立して立ち上がった新しい地図。
「クソ野郎と美しき世界」は、新しい地図の活動の一環として、草薙、香取、稲垣の3人が主演するオムニバス映画です。
全体で4つの短編で構成されており、そのうち稲垣、香取、草薙がそれぞれ主演を演じるエピソードが各1話の計3話。集大成というか種明かしのエピソードが4話目に来ます。
正直この映画は、あの3人がこのタイミングで出すという文脈ありきの映画です。
SMAP論というか、ジャニーズ論というか、アイドル論というか、この映画で表現されるメタメッセージや、映画が上映されるコンテキストにこそ語るべき価値があるのです。
ああいうふうな形でSMAPを抜けた3人の、そこに広がる「自由」を感じられただけでも鑑賞の価値はあったかなって思っています。
ただ同時に、映画自体の評価は個人的には余り良くありません。
正直、あの3人がアイドルまたはアーティストとして今後どう活躍していくのか、事務所の後ろ盾なしでどこまでいけるか、一抹の不安のようなものも感じさせられたのも事実です。
ピアニストを撃つな!
事前情報の中では一番期待感が高かったです。ぶっちゃけ、幼稚な雰囲気の世界観にはじめの10分くらいは結構キツかったですが、そこはさすがの園子温。その荒唐無稽さがだんだん癖になり、笑いになっていました。
終盤、吾郎ちゃんがピアノの引きマネすると、フジコの身体が反応するというシーンには思わず吹き出してしまいました。
慎吾ちゃんと歌ぐいの巻き
3話の中では、一番メッセージ性が高い、というか香取くんが本人役で出ているという時点で最早メタですら無く、直球にSMAP‘後’の香取くんが描かれていると言えます。お話自体の寓話性が高く、星新一的味わいのエピソードです。
歌が奪われた瞬間の不気味さがこの手のお話に重要な空気感を演出していたと思います。
光へ、航る
爆笑問題の太田がメガホンを取ったことが一番の話題。アベマTVの72時間テレビの時も、歯に衣着せぬ物言いで話題となっていました。
しかしながら、正直監督としての演出力は難有りでしょう。
ただ、他の2話と違って一番ストーリーラインがはっきりしていたというのはあります。(だからこそ4話目のようなことが可能になった。)
短い尺で、ストーリーをなぞっていたらああいう感じになるかな、と。
ただ、右腕の移植というありえなさ等設定の時点で色々とノイズが多かったです。映画を作る際の設定の作り込みって大事なんだな、と素人ながらに気付かさせれました。
新しい詩
稲垣、香取、草薙主演。児玉雄一監督。
これまでのエピソードの集大成というか、ネタばらしのようなエピソードで、全編ミュージカル調で展開されます。
クソユニバースという言葉が始めに打ち出され、これまでのエピソードが一つの世界観の下であったことがわかり、エピソード間の繋がりも明かされていきます。
しかしながら、各エピソードのストーリー自体が余り興味を引くものでもなかったので、ここでネタバラシと言われても、ふーんと言った感想しか出てこないという残念な結果になります。何かもったいつけたように、「真実に目を懲らせ」的なセリフが都合2回登場するので、タネが明かされた以外にも何かネタが仕込まれているのかと勘ぐるほどです。
個人的にはせっかく3人が一堂に会すのだから、そこが一緒になるエピソードが一つ挟まれていたらもっとグっとくる演出だったかなと思います。
とはいえ、香取くんの憑き物が取れたようなミュージックシーンは、率直に観ていて楽しかったですね。
というわけで映画そのものよりも、映画の企画そのものが、SMAP時代にはあり得ない設定など興味深く鑑賞できた一方、彼らの方向性が今後どのようになっていくのか今後も注目だと感じた一作でした。