昨年のTPP大筋合意、そしてそれに続く小泉進次郎の自民党農林部会長への抜擢からのTPP関連政策大綱が取りまとめられたのは、記憶に新しいところです。
そしてまとめられた大綱を基に、
農政新時代〜努力が報われる農林水産業の実現に向けて〜と銘打ち、農林業関連のTPP対策が示されました。
今回はその中味を少し見ていきたいと思います。
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/tpp/pdf/nousei_sin_ph.pdf
まず、大きく分けて二つに示されています。
攻めの農林水産業への転換
経営安定・安定供給への備え
正直、初見の感想としては、農政新時代という割には、既存の農政路線の延長であるのかな、という気はしています。
また、攻めの農林水産業への転換と経営安定・安定供給への備えというのは本来両立させるべきものなのかという疑問が湧きます。結局、総華的な対策になってしまうのではないかという懸念があるからです。
とはいえ政策のマインドとしては、意欲ある経営感覚を持った担い手の支援ということが重視されており、その部分は評価できます。
それでは一つ一つ見ていきたいと思います。
1.攻めの農林水産業への転換
この項目では、次世代を担う経営感覚に優れた担い手の支援、国際競争力のある産地イノベーションの推進等が挙げられています。
基本的には、大規模化や集約化による生産コストの削減や金融支援による投資意欲の向上策と捉えることが出来ます。
これらは従来路線からは多く外れたものではありません。このことはある意味、TPPの締結の有無に関わらず、日本の農業が検討すべき方向性であることが伺い知れます。
TPP対策として、より関係が深いのは輸出やインバウンド関連の対策でしょう。
これらについてもこれまでから取組自体はなされていたものですが、今回目標を前倒しにするなど意欲的に取り組む旨が記載されています。
一方で最も直接的と言える対策は
2.経営安定・安定供給への備え と言えます。
これはかなり、貿易・関税の専門的な知識も必要とされることからここではあまり説明はしませんが、基本的にはTPPによって懸念される価格低下について、補填するような内容となっています。
この辺りは、1.攻めの農林水産業への転換では意欲ある経営感覚を持った担い手を支援するものである一方で、農業者全体の支援とも取れるでやや総華的と言える部分だと思われます。
とはいえ、米については、従来的な経営所得安定対策などの直接所得補償の制度が前面に出ていない点で、バラマキ批判は当たらず、サブタイトルにもあるような「努力が報われる農林水産業」という精神が随所で見て取れることが出来ます。
今後の検討事項も時期も含めて明記されていることから、今後の動向を注視したいと思います。