今回は、冬場の肥料は効かない? という話をします。
先日、11月は異例の夏日で、暖かい日が続いたという話をしました。
暖かい日が続くことは、植物にとって、いいことも悪いこともありました。
特に私の家庭菜園では、今年秋冬野菜の種まきのタイミングを逃してしまったので、
私にとっては、秋の夏日はありがたい限りでした。
植物は暖かい方が成長に良いですから、出遅れた秋冬野菜の挽回になったからです。
寒くなって成長が止まった野菜たち
しかしながら、今週に入ると、朝晩はしっかりと冷え込むようになりました。
野菜というのは、寒いと成長が止まってしまいます。
人間だって、寒いと朝布団から出られずに体を縮こませて、じっと動けなくなりますよね。
野菜もじっと寒さに耐えるように、成長を止めて踏ん張るわけです。
だから冬の間は植物の成長がものすごく鈍くなります。
寒いのは寒いので良いこともあります。大根やネギ、ほうれん草などは、寒さにあたることでグッと甘みを増すことが知られています。
でも、それはあくまで野菜が収穫前まで成長した後の話です。
我が家の家庭菜園では、スタート出遅れた野菜たちがたくさん成長の準備をしているところです。
夏日効果で挽回したといっても、まだまだ小さいです。
それでは、ここで肥料を与えてみることを考えます。
肥料は水に溶けてはじめて効果がある
実は、肥料というのは冬場はあまり成長には効果がありません。
肥料は水に溶けてはじめて効果があるからです。
植物の根っこのことを考えましょう。
植物は動物のように、固形の食べ物を食べて、消化して栄養に変えられるわけではありません。
根っこから水分や養分を吸い上げているのです。
この時、植物は液体の形でしか養分を吸うことはできません。
化学肥料はどんなものでしょうか。
ホームセンターにある粒々の肥料です。つまりは固形です。
私たちが、畑で肥料を撒くとき、これらを一握りパラパラと土に撒きます。
この状態では、植物に吸収されることはありません。
これらの肥料は、土に含まれる水分で溶けてはじめて野菜に吸収されるのです。
だから肥料をやった後、水をあげたり、土で混ぜ返したりして、なるべく水に溶かすようにします。
土の表面に肥料があるだけでは、植物が食べられる形にはならないのです。
今は化学肥料で説明しましたが、有機肥料だって同じです。
有機物はそのままでは、植物は利用できません。
土の中の微生物の手によって分解され、最後まで分解されたら、水に溶ける養分の形になって、ようやく植物が吸収できるようになるわけです。
肥料が植物に吸収される仕組みを覚えておくといろんなところで役立つかもしれません。
さて、
「水に溶けてはじめて肥料が効く」
実は、このことが冬場は肥料が効きづらいことと関係しています。
以下の3つの理由からです。
- 冬場は寒いと水に溶けにくい
- そもそも冬場は雨が少ない
- 冬場は野菜は肥料吸収しない
一つ一つ見て行きましょう。
1 冬場は寒いと水に溶けにくい
これは砂糖水を想像すればわかりやすいです。
水というのは、暖かい水だとたくさんの砂糖が溶かせます。
逆に冷たいとあまり水に溶けず、結晶化されたりします。
中学の理科で習うことです。
冬場は寒いので、当然土の中に含まれる水も冷たいです。
水が冷たければ、あまり肥料も溶けません。
そうなると、植物が利用できる水分も少なくなるということです。
2.そもそも冬場は雨が少ない
冬って空気が乾燥していてあまり雨も降らないですよね。
つまりは、土の中の水分が乾燥気味なのが、冬場です。
当然、天然の水分が少ない状態なので、その状態でなんぼ水に溶けて効く肥料を与えても植物の成長には影響がありません。
そもそも雨の降らない冬は、肥料の効きが良くないのです。
3.冬場は野菜は肥料吸収しない
冬は、野菜はじっと寒さに耐えて動かなくなると言いました.
そこでは、生命活動そのものが、小さくなっています。
生き物の体の中では、絶えずなんらかの化学反応が起こっています。
化学反応は、ある程度の温度を必要とします。
人間だったら、平温と言われている35℃や36℃くらいでしょうか?
化学反応にはエネルギーを必要とします。
ところが、寒い環境下だと反応が鈍くなります。
成長が止まる原因はそこにあります。
だから、あまり野菜は冬場は、栄養を吸収しません。
栄養を吸収しても活用するだけの温度が足りないからです。
ただひたすらに寒さに耐えるけなげさがあるのです。
以上の3点から、冬場は肥料が効きにくいということを説明しました。
夏場と違って、成長が悪くても肥料をやれば、劇的に回復ということはあり得ません。
私たちは天候に勝つことはできません。
ビニールハウスや保温効果のある部屋で栽培しない限りは、野菜の成長は基本的には天候任せになってしまうわけです。
冬を堪えてじっと春を待つ。
生かすも殺すもお天道さま次第なのが、農業の世界なのです。