三児の父はスキマ時間でカルチャーライフ

仕事も趣味も育児も妥協しない。週末菜園家が、三児の子どもたちを育てながら、家事と仕事のスキマ時間を創って、映画や農業で心豊かな生活を送るブログ

〈園芸コラム〉タアサイの美しさにはわけがある 植物の成長戦略が生んだ造形美

 

f:id:mqchaso:20201211214925j:image

 

ボタニカルアートという分野をご存知でしょうか?

植物を題材にした美術作品です。

 


植物の造形って人工物にはない、独特の美しさがあります。

「生物は神様が作り上げた産物である。」

「進化では、生物のような複雑な構造は説明できない。」

昔の人がそう思うのももっともだと思います。

 


それくらい植物の造形って素晴らしいものだと思っています。

 


もちろん、私たちが普段食べている野菜たちも美しい造形のものが多いです。

私が育てているもので、特に感心したのは、「タアサイ」でした。

 

 

タアサイの造形美

 


同じ菜園をやっている仲間から譲り受けたもので、今年初めて栽培しました。

中国原産の野菜で、白菜の仲間にあたります。

 


2月になると寒さで暖かみも増すことから、「如月菜」とも呼ばれているそうです。

 


そんなタアサイを、まだ2月にはなっていませんが、そこそこ大きくなったので、先日初めて収穫しました。中国野菜ということで、中華スープにしていただきました。美味しくいただきました。

 


でも、注目していただきたいのは、美味しさではないんです。

その形です。見てください。

f:id:mqchaso:20201211213950j:image


写真だと少しわかりづらいかもしれません。

タアサイは、中心から放射状に葉っぱが伸びているのがわかります。

また規則正しく葉っぱが並んでいることもわかります。

 


他の野菜にはみられない、整然とした規則正しさがあるのがわかります。

 


うちで育てた野菜で分からなければ、Google画像検索でも調べてみてください。

 

ターツァイ/ターサイ/タアサイ/搨菜:旬の野菜百科


より美しいタアサイの造形が楽しめると思います。

 


さて、タアサイはなぜ美しいのでしょうか? 

やはり神様がつくったものなのでしょうか?

実は、タアサイの美しさには意味があります。

 

 

美しさにはわけがある

 


例えば、放射状に広がった葉っぱ。

真ん中の方の葉っぱは小さく、外側の葉っぱは大きいです。

葉っぱ同士が、重なり合わないように広がっている様子がわかります。

 


これは、光を効率的に吸収するためです。

ご存知のように野菜は太陽の光を浴びて育ちます。

葉っぱが重なりあうと、葉っぱ同士で光の取り合いの状態になります。

森の中では、あまり下草が多い茂っているイメージがないと思います。

理由は単純で、暗いからです。

 

 

 

また、タアサイは如月菜とも呼ぶと言いました。

寒い冬を超えるということです。

 


タアサイがあの形を取っているのは、このことも関係しています。

 


タアサイの生え方をよく見てみてください。

できるだけ地面に這うように生えているのがわかります。

実はこれは寒さ対策です。

f:id:mqchaso:20201211214141j:image


野菜は、背が高くなると、その分寒い冬の風にさらされることになります。

風に当たらないように、葉っぱを横へ横へと広げているわけです。

 


また寒い冬においては、空気よりも地面の方が暖かくなります。

植物からしたら、床暖房と言えるかもしれません。

少しでも暖かいところで過ごせるように、地面ギリギリのところで、葉っぱを広げています。

まるで、ベッドにうずくまるかのように、じっと地面にへばりつくようにして、寒さに耐えているのです。

 

 

 

タアサイのあの形は、タアサイが冬を越すための戦略と言えます。

冬を乗り越えることを突き詰めていった結果、美しいものにたどり着く。

素敵な話だと思いませんか?

 

美しさにつながる野菜の戦略

 


面白いのは、タアサイのその後の成長です。

通常ら2月に収穫しますが、そのままおいておくとどうなるか? 

春になって暖かくなると、ニョキニョキニョキと茎が伸びて花が咲きます。

高い温度を感じると、春が来たのを感じ取って、花を咲かせるのです。

 


これは、「とう立ち」と言って、とう立ちすると葉っぱが硬くなるので、農業的にはあまり好まれません。

 


でも、植物にとっては子孫を残すためにとても重要なプロセスです。

寒い冬を乗り越えたタアサイは、地べたを這いつくばらなくてもよくなりました。

そこで、伸び伸びと背を高くして、花を咲かせて、次の世代につなげる準備を始めるのです。

 

 

 

植物の機能美には、感心をさせられてしまいます。

今回、タアサイに限って、話を進めてきました。

タアサイが一番わかりやすく、美しい形をしているからです。

 


実は、この戦略をとっている野菜は多いです。

大根、白菜、キャベツ。

どれもが、冬の間葉っぱは、地べたを這いつくばって、寒さを乗り越えようとしています。

そして、暖かくなると、ニョキニョキと背を高くします。

 


最近このブログでも、レタスのとう立ちについて紹介しました。

 

 

mqchaso.com

 


とう立ちしたレタスをよく見ると、ちゃんと、茎から葉っぱが出ていることがわかります。

地面に生えている時は、地面から直接葉っぱが生えていました。

 


寒い冬の間は、背を低くするために、最大限茎は小ささを保とうとするのですね。

 


野菜の美しさには理由が有ります。

植物含め生き物には、生きていくために必要な機能を備えるために、必要なカタチを取ります。

それが結果として、人間が作る人工の造形物には表現できない形が生まれてきました。

 


そんな野菜の形と意味にも着目して農業をすれば、より面白くなるかもしれませんね。