野菜は鮮度が命だと言います。
せっかく買った野菜や収穫した野菜がしなびてしまっては美味しさも半減です。
特にサラダで食べる場合はシャキシャキ感が命です。
それでは、野菜の鮮度を保つためにはどうしたら良いか?
しなびた野菜を復活させるにはどうしたら良いか?
その答えを知るためには,野菜のシャキシャキ感の正体に迫る必要があります。
一体何が野菜をシャキシャキ感じさせているのでしょうか?
シャキシャキ感の秘密は?
その秘密は,水分にあります。
「そんなこと言われなくてもわかっているよ」
そんな声が聞こえてきそうです。
実はこの「水分」という答えは,半分正解半分間違いです。
確かに,野菜のシャキシャキ感には,水分が必要です。
でも,シャキシャキ感は厳密にいえば,野菜の細胞の浸透圧が関係しています。
浸透圧とは,つまりは圧力です。水分が細胞内に入ることで,水分が細胞を押し広げます。
水風船を想像するとわかりやすいかもしれません。
野菜は,細胞一つ一つの集まりです。
細胞一つ一つが水風船のように膨らむことで,野菜を噛んだ時のシャキっとした感覚を得ることができます。
浸透圧と聞いて中学や高校の理科を思い出した方も多いのではないでしょうか?
砂糖や塩などの物質を溶かした水と真水を,
「溶けている物質は通さないが水分は通す」膜で区切ると,
濃度が高い方から,低い方へと水分が移動することが知られています。
濃い液体がだんだんと薄まる方向に水が動くわけです。
レタスで実験してみた
では,ここで実験です。
先日収穫したレタスを,塩水と真水に浸してみることにしました。
レタスのシャキシャキ感の原因が,もし水分だけであれば,塩水にしても,真水にしてもシャキシャキ感は残るはずです。
タッパに入れたレタスを比較してみてください。
左が塩水で,右が真水です。
下の写真は浸してすぐの写真です。当然両者はそんなに変わりません。
しかし,1時間ほど経過したあと,あらためて確認します。
次はいかがでしょう?
左側,つまり塩水につけていた野菜がしなびてしまっていることがわかります。
水分はたっぷりあるにもかかわらず,シャキシャキどころか,完全にしなびてしまいます。
シャキシャキ感の秘密を細胞レベルで読みとく
ここも,植物細胞の浸透圧で説明がつきます。
高校で生物を勉強した人にとっては,勉強の経験があると思います。
上で説明した「溶けている物質は通さないが水分は通す」膜は,植物の細胞の膜と同じです。
植物の細胞に含まれている水分はちょっとだけ塩分が含まれています。
そこで、細胞を真水と濃度が高い水に浸してみるとどうなるか?
真水に入れた場合、濃度が低い方から高い方へと水分が移動するので、細胞のなかに水分が入ります。すると、水風船みたいに細胞が膨らみます。
ちなみに、動物細胞の場合は、水が細胞の中に入って、破裂してしまいます。
植物細胞は,細胞の周りは細胞壁で囲まれているので,破裂することはありません。
この細胞壁の働きで,野菜の形を保っているとも言えます。
逆に濃度が高い水,たとえば塩水に入れた場合は,反対の反応が起こります。
つまり,細胞の中の水分が,細胞の外に移動します。細胞外の溶液の濃度を薄めるためです。
水風船がしぼんでしまうイメージです。
ここでお話しした細胞レベルの出来事が,野菜全体でも同じことが言えます。
野菜は,全て細胞からできているからです。
ここまで野菜のシャキシャキの秘密は細胞の水分による浸透圧にある,とお伝えしてきました。
しなびた野菜を復活させるには?
この結果を踏まえて,しなびた野菜の鮮度を復活させるにはどうしたら良いでしょうか?
答えは簡単です。
野菜を真水に浸せば良いのです。
そもそも野菜の細胞に含まれている水分はちょっと塩分を含んでいます。
これは人間でもそうですよね。汗なんかがしょっぱいことからもわかります。
つまり,真水と比べたら濃度が濃いわけです。
野菜を真水につければ,真水に含まれている水分が野菜に移動します。
すると細胞内の水分が多くなります。
細胞内の水分が多くなると,細胞が水風船のように膨らんでハリが出ます。
これが,野菜のシャキシャキ感を生み出すというわけです。
野菜は収穫してそのままだと,どんどんしなびてしまいます。
野菜も生き物なので,呼吸をし,水分が失われるからです。
また,乾燥して野菜も体から水分が奪われてしまいます。
野菜を長期保存する場合に,新聞紙に包んで冷蔵庫に入れたりするのは,呼吸を抑えるため,そして乾燥を抑えるためです。
でも,多少しなびたとしても大丈夫です。
水にしばらく浸すことで,その鮮度を復活させることができると思います。
今回は野菜のシャキシャキ感の復活の方法について勉強しました。
細胞レベルでのメカニズムについて理解すると栽培も料理も楽しくなるはずです。
ぜひご参考ください。