秋冬野菜が美味しい季節になりました。
私の週末菜園でも、大根やかぶの収穫がはじまっています。
大根やかぶを育てていると、ふとある疑問が湧きます。
大根やかぶは一体どこを食べているのだろうか?
そんなの聞くまでもないという答えが返ってきそうです。
根っこを食べているのに決まっているではないか?
私だってそう、根っこを食べていると思っていました。
「大きなカブ」は地中に埋まったカブをみんなで引っこ抜くという童話でした。
つまり、カブは地中に埋まっているモノ=根っこだということです。
私たちは太った根っこを食べている、そう理解していました。
でも、それは半分正解、半分間違いでした。
厳密に言えば、大根やカブでは、私たちは「胚軸」と「根」を食べています。
植物学的に言えば、私は根だけを食べているのでは無かったのです。
胚軸とは一体なんなのでしょうか?
まずは、畑で育てているカブをご覧ください。
この畑で育った様子が、「大根やカブは一体どこを食べているのか?」の疑問の発端でした。
根っこといえば、地中に埋まったものの、はずです。
ところがです。
カブを育てていると、そのほとんどが、地上にむきだしになっていることがわかります。
次に大根も見てみましょう。
大根は、確かに地中に埋まっています。
一方で、地上にむき出しになっている部分もあります。
普段食べているところ、そのほとんどが根っこではないというのでしょうか?
根っこでなければ、地上にむき出しになっている部分はなんなのでしょうか?
茎を食べているのでしょうか?
実は、この地上にむき出しになっている、この部分こそ「胚軸」なのです。
胚軸は、茎っぽくも見えますが、厳密には「茎」とは区別されるものです。
大根やカブでは、胚軸と根っこは、「ひとつづき」になっています。
そう、根っこを食べる植物は、大根やカブに限らず、「胚軸」と「根」に分かれていて、
その割合は品種によって異なります。
大根とカブでいえば、大根は「根」の割合が大きいですし、カブはほとんど「胚軸」を食べていると言っても過言ではありません。
「根」でもない、「茎」でもない。
それでは「胚軸」とは一体なんなのでしょうか?
胚軸は、茎と根のちょうどボーダーラインの存在であるといえます。
胚軸を説明するには、植物が赤ちゃんであった頃まで遡ります。
植物は「種」から育ちます。
種の中には、植物の赤ちゃん、これから育つ体の素である「胚」が入っています。
この「胚」が種から芽を出し、大きな植物へと育っていくわけです。
この「胚」は主に三つの構成要素からなっています。
「子葉」、「胚軸」、「幼根」
難しい言葉が続きましたが、ここで登場「胚軸」です。
この様子は、柿の種をわって見るとよくわかります。
種の断面で、植物の赤ちゃんが確認できます。
子葉は、「芽」と言い換えても良いかもしれません。
種から芽を出して、地上で開く双葉が子葉になります。
ここから植物は大きくなって、茎や葉っぱを作ります。
幼根は、読んで字のごとくです。
そこから大きな根っこに育ちます。
では胚軸はどうなるのでしょうか?
実は、胚軸だけはそのまま、茎と根のボーダーラインの存在としてそのまま残ります。
品種によって、根っこと同様太ったり、そのままだったりします。
大根で模式したものを下で示します。
このように、胚軸は赤ちゃんの頃にできたもので、それがそのまま大きくなったものを食べているということでした。
胚軸と根は「ひとつづき」だと言いました。胚軸と根っこ、どちらの部分を食べているのか区別することはできるのでしょうか?
カブをよく見ると、体の本体から、下の方では、ちょろちょろとヒゲ根が伸びているのがわかります。
このヒゲ根が伸びている部分が根っこだといえます。
一方で、胚軸の部分はツルツルとしています。
写真でも見ても、カブの場合、そのほとんどが胚軸であることがわかります。
大根の写真は省きますが、同じです。
カブと同様、小さい根っこの跡が、スーパーで買った大根にもついているはずです。
その跡があるところが根っこで、それより上は胚軸と言って良さそうです。
胚軸と根で食味は違うのでしょうか?
おそらく、形の部分では、胚軸も根もそんなに違いはないのではないかと思います。
でも、大根の場合、地上部に近い部分(=胚軸)の方が甘くなりやすく、根先は辛み(=根)が出やすいとよく言います。
それは、葉っぱで作られた養分が溜まりやすいからとも言えるでしょうし、胚軸と根の違いなのかどうかということははっきりとわかりません。
大根やカブの違いを中心に、胚軸について説明してきました。
正直、知らなくても全然生きていける知識です。
いわゆるトリビアというやつかもしれません。
でも、こういった植物の知識を持っておくことで、畑での育ち方と結びつけて考えると、家庭菜園がちょっと楽しくなると思います。